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2005/04/10

京都地裁のある訴訟 代弁できるのは誰?

今年の2月18日に京都地裁がある入所型福祉施設に対する、利用者からの損害賠償請求を棄却する判決を言い渡しました。

提訴はちょうど2年前の2月18日です。当時の新聞には次のような記事があります。
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 知的障害が原因で適正な飲食量を調節できないのに、入所する施設の指導員に異常な食事をさせられ、胃を全部摘出したなどとして、京都府城陽市の知的障害者施設に入所する女性(52)が18日、施設を運営する社会福祉法人を相手取り、約2000万円の損害賠償を求める訴えを京都地裁に起こした。
 訴状によると、女性は出された食事を完食する性格で、障害が原因で適正な飲食量を調節できない。1999年2月24日、施設の指導員が女性を外出させた際、屋台などでラーメンや菓子、ピザなどを食べさせた。
 女性は施設に帰った後も夕食を食べたところ、下痢や嘔吐(おうと)を繰り返し、胃が破裂して腹膜炎を起こし死亡する危険があったため、胃の全摘手術をした。胃は急性胃拡張になっていた、としている。
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判決の概要は次のようです。
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 従業員がおもしろがって食べさせた事実はない、原告が本件当日外出時に飲食した量は(原告主張事実の量であったとしても)、原告に胃潰瘍や胃の破裂を生じせしめるほど異常な量とまではいえない、従って、原告が知的障害を有することに乗じて、被告従業員が、原告に必要以上の食事をさせて、原告に急性胃拡張ないし胃潰瘍を発生させたと認めることはできないので請求を棄却する。食事の量と胃の全部摘出とは因果関係もない、とも書いています。
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 判決文を見る限り、法律論が問題なのではなく、原告の主張事実(おもしろがって沢山食べさせた)が完全に否定されています。食べ過ぎで胃が裂傷が生じることもあり得ない、とまで書かれています。ずいぶん原告側にキビシイ事実認定ですが、真実は判決文を読んだだけの私にはわかりません。

 私が、この訴訟で一番に興味を持っているのは、原告は被告の施設にまだ入所しているということです。胃の全部摘出手術を受けたのですが、退院後、施設に戻り、入所しながら施設に提訴しています。

 原告は2.6才程度の知能であると認定されています。母親がいるようですし、後見人もいるようですが、母親が後見人かどうかは判決文からはわかりません。。
 わかりませんが、本人以外の誰かが、この施設に対して紛争行動を行っているはずで、その方が実質的な訴訟当事者でしょう。

 こういう問題を前にすると私は、本人の意向を誰が代弁しているのだろうかと考えてしまいます。制度的には後見人でしょうが、自分がいま入っている施設を提訴していると本人が理解できているとは思えません。本人の日常生活はだれが見ているのでしょうか。施設でしょう。日常生活に根付いた代弁は施設側が(しか)できない、ということになりましょうか。しかしそれをチェックするのが後見人でもあります。

 施設に入所しながら、その施設を訴えてはいけない、などということを主張するつもりはありません。出て行ってくれと言われないために施設のいうがままになってしまう親に比べれば、よくやっているといえるのかもしれません。また提訴されても、本人をずっとみている施設もよく我慢し、よくやっているといえるのかもしれません。
 ただこの種の紛争が訴訟になったときに、誰が本人の意向を充分に代弁できるのか、よくわからない、検討が必要だといいたいのです。法廷で本人を代弁できるのは、原告でしょうか被告でしょうか。

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