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2005/05/07

法律事務所(昔の?)

 まだ30になったばかりの駆け出し研究者のころ、友人と一緒に東京近郊の地方都市へ、庶民派で有名な弁護士事務所を訪問したことがある。
 事務所は、駅からすぐの商店街の中にあるという話であった。庶民派のその先生のイメージから、さぞかし誰でも気軽に入れて明るい賑やかな事務所ではないか、そんな思いをもっていったのであるが、どうにも見つからない。それほど長くはない駅前商店街を行きつ戻りつして、やっとみつけた事務所は3階建てのビルの3階で、1階が肉屋さん、二階が喫茶店。1階からだと2階からうえは商店街のアーケードに隠れていてよく見えない。喫茶店は下の階段入り口のところにネオンサインの看板を出しているが、法律事務所の看板はよくよく探さないと見つからない。なんともはや見つけにくい事務所であった。

 ようやく事務所に落ち着いた私は、インタビューの冒頭につぎのような質問をした。
 「先生、失礼ですが、この事務所は分かりにくいですねえ。もっと派手に看板を出すとか、目立つところに移転するとかしたほうが誰にでもわかっていいと思うのですが」
 「君ねえ、法律事務所に来る人たちってどんな人たちか知ってる?」
 「はあ?、依頼者のことですか?」
 「そう依頼者。この人たちは困っている。トラブルの渦中にあって悩みぬいている。できるだけ人に知られたくない。遠くからみて法律事務所だってすぐに分かるような建物に、そんな人たちが喜んで入ってくると思うかい。法律事務所なんてひっそりとしたちょっとでは気が付かないようなところにあるのが良い。一等地にド派手な看板を出して事務所を開くなんて愚の骨頂だよ」。
 法学部の教師となって弁護士事務所へ行く機会がその後もあったが、なるほどどこもあまり目立たない。それと知って行かないと法律事務所がそこにあるなんて気がつかないようなたたずまいのところが多い。弁護士事務所は、知っている人には「入りやすいところ」、知らない人には「存在しない」ところなのである。
 その勢いで考えたときに、事務所をホームページで宣伝するってのはどうなんだろう。これはよくわからない。ホームページにアクセスするのが、他の人に見られるわけではあるまい。そういう意味では、見た目の度ハデさとは裏腹に、アクセスしやすい方法だといえる。でも知らない人が沢山やってくる(可能性がある)。知らない人の依頼は、受けたくないと思っている弁護士は多い。「だから」ホームページは作らない、とある大手の法律事務所の弁護士がつぶやいているのを聞いたことがある。
 法律事務所の作り方は、意外に奥が深い。

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