サラ金の保証人にさせられる障害者(続)
保証人にされてしまった知的障害者の保証責任を否定した裁判所の理屈ですが、少し説明が必要でしょうね。
法律家であればすぐにでも判例集にアクセスできるのですが、一般の方には面倒でしょうから。インターネット上の裁判所判例集(無料のもの)ではみつかりませんでした。雑誌類では次のところに掲載されています。
判例時報1878号100頁 判例タイムズ1166号185頁
金融・商事判例1204号26頁 市民と法33号69-73
ちょっと判決文を読みやすいように訂正して引用します。
まず、本人の計算能力ですが、裁判所は、「当審における本人尋問の結果によれば、控訴人(障害者本人のことです)は、保証人になると「責任をかぶる」ことになる、利息とは「お金が増えること」などと一応の理解は示すものの(これは、前のサラ金との連帯保証契約が発覚した際、叔母から教え込まれたものと推測される。)、計算については、足し算のほか掛け算はできるが、割り算(6÷2)や少数計算(10×0.2)はできず、100円の1割は「多分10円」と正答するが、50円の2割や50円の15%はわからず、本件金銭消費貸借契約書の「遅延損害金」の文字を読むことができず、その欄の記載内容も理解できないことが認められる」と判断しています。
その上で、本人の金銭管理能力につき次のように判断して意思能力(このケースでは保証契約を結ぶ能力)を否定しているのです。
「本人の金銭の価値についての理解は、簡単な買い物、給料などについては及んでいるが、数百万円以上の理解には及んでいないところ、本件連帯保証契約は簡単な買い物や給料額を遥かに超える150万円であること、控訴人は50円の15%は理解できないから、本件連帯保証契約の利息年28.835パーセント、遅延損害金年29.2パーセントの意味(元金返済を遅滞すると3年余りで返済額が借入金の2倍の300万円に達する)を理解できていないこと、にもかかわらず、控訴人が本件消費貸借契約書等に署名したのは、控訴人は他者から強く指示されると抵抗できない性格であり、Fから「余計なことは言うな」と言われていたことなどから、Fとアイフル従業員から言われるままに行動した結果であることが認められ、これらの事情を考慮すると、控訴人は本件連帯保証契約締結の結果を正しく認識し、これに基づいて正しく意思決定を行う精神能力を有していなかったというべきである。」
金利計算ができないから保証の中身が理解できていない、という判決の論理は説得力がありますね。しかも、ほとんどの知的障害者がそうなのではないかと思います。いい判決です。
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コメント
MOMO さん、ありがとうございます。少しづつですでも法律家の世界に理解してくれる人が増えてくるといいですね。まだまだやることは一杯ありそうです。
と、いいつつ、変換ミスを訂正しました(苦笑)
投稿: satosho | 2005/06/07 15:46
こんにちは、初コメントさせていただきます。
この判決は、いろいろな意味で注目すべきものだと思っています。この判決の理屈からすると、ご指摘のとおり、知的障害者はほとんど「保証契約」や「貸金契約」の締結能力がないことになりますが、それにとどまらない気もします。「貸金契約」はともかく、「保証契約」、とりわけ、「連帯保証契約」で負うべき責任の内容を、どれだけの一般の人が正しく理解しているか・・・
これまで、「一般人なら理解できるはず」というレベルが高すぎたのではないかと思います。かつて、「自分が払わなくてよいと思っていた」保証人による錯誤の主張を全面否定した最高裁判決がありましたが、最近、下級審では、そのあたりの判断も揺れてきています。
市民感覚にあった判決だと思います。
投稿: MOMO | 2005/06/07 15:10