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2005/09/18

障害者後見3

さて1・2と成年後見について述べましたが、ここで一区切りします。あれこれ書きたかったのですが時間がないのです。すいません。
以下は、今年の2月にある障害者の親の会の機関誌に載せたものを加筆・訂正しています。いまの私の考えを簡潔に要約していると思いますので、1・2の続きとして便利です。

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1) 成年後見制度の利用は、支援費制度が実施される前後から知的障害の関係者の間でにわかに注目された。その最大の関心事は、措置制度がなくなって施設利用や福祉サーヴィスの利用が、障害者本人と事業者との契約ベースで運用することになり、契約締結能力がないと判断される障害者に対して、後見の利用が必須となると思われたためである。
 この点の議論と動きは、最近になってようやく落ち着きを見せてきています。成年後見の利用実績はほとんど伸びていないのですが、一時はなんでもかんでも成年後見さえつければ解決するかのごとぎ論調が散見されましたので、最近の落ち着きは好ましいことだと考えています。

2)なぜ好ましいと思うのか少し説明します。
 考えてみれば、あたりまえのことなのですが、成年後見をつけたからと言って我が子の奇声や多動がなくなるわけではありませんし、パニックがなくなるとも思えません。こんなことは誰でもわかっていることなのですが、では次のような御相談はどうでしょうか。いわく、「無駄遣いをして仕方がないので、後見をつけたい」、「アダルトサイトに興味をもって困っている、成年後見はどうだろう」

 こういう御相談を受けたときに、私は同じ親として、そのお気持ちに大いに共感をするのですが、弁護士としては「つけても意味がないです」とお答えせざるを得ないので、心苦しく思っていました。成年後見は、ご本人の「法律上の判断能力」を補う制度ですので、「小遣い帳レベルでの金銭管理能力」や「趣味・嗜好についての道徳的決断」を行うものではないのです。重大な医療行為(手術など)の同意権(代諾権限といいます)すらないと考えられています(この点はなんとか改革しないといけないとは思いますが)。

3) あちこちの親の会が勉強会を重ねることで、成年後見のこうした「無力さ」がようやく理解されてきて、無理な相談や要求が減ってきています。それはそれでいいのですが、こんどは「そんな程度のものなら、使わなくてもいいや」と愛想をつけてしまう方が出てきています。こんどはこちらの方が気になります。

 たしかに日常の身近な金銭管理、生活ケア、行動援助、そのどれをとっても成年後見をつければ万全であるなどといえるわけではありません。しかし、では、これらを誰がやれば「万全」なのか?。この問いに対する答えはまだでていませんし、障害者の支援にあたる身近な人間は、これからもずっと問い続けなくてはなりません。

4)親あるうちに
 よく「親なきあと」といいますが、この問題は、「親がいるうち」に手当てする必要があること、また「親がいるうち」も「親だけでなんとかなる」わけではないこと、この二つの理解が肝要です。

 親がいるうちに、我が子の将来を託す人を探す、どの親もそう考えているでしょう。生きているうちにそんな人を探し、加えて、親のたりないところを補ってもらう。それもなにかの資格のある人とか、職業的な専門家というだけでは不十分で、まさに我が子のことを、その趣味嗜好を含めて十分に理解してくれる、わが子に特化した「専門家」を育て探していく必要に我々は迫られていると思います。でもそんな方も、ひとりであれもこれもできるワケがありません(親でも無理です)。またすべてを一人でやることがいいことだとも思えません。つねに複数の支援者が必要なのです。このことは司法関係者だけでなく、行政にすらあまり理解されていないことなのですが、現実に現場で支援に当たっている人間は、日常的に痛感していることです。

5)複数後見の夢
 最近、私達は複数後見の道を探っています。また後見人とタイアップして生活支援をする人が必要であると考えて、そうしたシステム作りの試みを模索しています。どうでしょうか。
 
 ポイントはいくつかあると思います。
1)複数後見を基本にすること
2)見ず知らずの第三者後見人よりも身近な人を
3)法人後見は例外的

 育成会にも認知していただき大きく活動を進めようとしているところです。ご意見やご協力をいただけると幸いです。

育成会の記事はこちら
http://www1.odn.ne.jp/ikuseikai/2005/sokuhou/050905_no76.html

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コメント

 みっちゃんさん、はじめまして。そしてコメントありがとうございます。
 そうですよね。他の人からみて障害のあるなしがわからない人ほど、業者と餌食になることが多い。発達障害者支援法は、教育や医療サポートが主目的の法律ですね。地域生活での権利擁護は後回になっているので、これからです。

投稿: satosho | 2005/09/30 10:49

momoさんの所からやってきました。
私は高機能自閉症と診断された当事者です。
いちばん深刻なのは、発達障害者なんです。
特に自閉症のひとは、「字ずらで認識する」という特徴の故に、訪問販売の誘い文句にほいほいついていってしまい、トラブルがあると「あんたがわるいでしょ」みたいなたいおうで言いくるめてしまうという悲劇があるのです。
物事が十分に機能してないのに、知能に問題はないとおもわれてるので、「格好の餌食」とされてしまうのです。
自分自身も「生き直し」なる訓練の場が必要なんですが、なかなかない上に完全にみにつけるなんて困難です。
発達支援法が出来たのですが、この問題にふれてないのが気になります。

投稿: みっちゃん | 2005/09/28 08:52

コメントありがとうございます。そうなんですよね。たしかに民法や民訴だけではどうにもならない。財産管理だけでもない。成年後見制度だけでもどうしようもない。この続きを書いてアップしていきたいと思っています。

投稿: satosho | 2005/09/28 00:07

興味深いご指摘だったので、トラバさせていただきました。成年後見制度を意義あるものにするためには、財産管理と生活支援をタイアップする必要があると思います。しかし、これは、民法だけの範疇では難しい・・・

投稿: MOMO | 2005/09/27 18:13

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