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2005/12/18

昔の文章

新しい原稿を書こうと思って、前のファイルをあれこれ探していたら次のような文章を発見しました。自分でも忘れていました。これは1996年当時(今の民事訴訟法が制定される直前)の文章です。私は、証拠に関わる研究から大学に残ってきましたが、この10年ほどはあまり積極的な活動をしていません。
 この10年で民事裁判が一番変わったことは、早くなったことです。高等裁判所などほとんど審理がされません。一回の審理で終結し、一審とは違う判断がでることがあります。そのことを一般の方々はほとんどごぞんじありません。以下、拙稿「証拠収集」法律時報1996年10月号15-21Pより

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民事訴訟は国民にあまり利用されていないと言われている。これは生活紛争でもそうであるし、企業のビジネス紛争でもそうである。しかし他方で、利用されていないはずの裁判所の第一線の裁判官や職員は、その抱える事件負担の多さにあえぐと同時にその中で、個人的な努力を重ねている。弁護士としても同じことである。これは、一体どう理解すればいい風景なのだろうか。


 訴訟が使われるかどうかという問題は、裁判関係者には残念なことかもしれないが、訴訟法の改革だけではきまらない。どんな社会でも紛争は存在するが、それが大きな政策枠組あるいは社会システムの中で民事裁判というルートを通じて処理せざるをえないような構造になっていれば、個々の紛争当事者が嫌だ嫌だと思っていても、また、法曹関係者が乱訴の弊を嘆き、事件の過重負担にあえいでいても、紛争は民事裁判に流れ込んでくる。今回の民訴改正(平成8年)で、日本社会の大きな政策枠組がかわるのだろうか。社会システムがかわるのだろうか。民訴改正を「きっかけにして変わるか」と問われれば、否定的に思う。しかし、これから先、社会のほうが変化するかどうかは、誰にも分からない。そんな中でこれから裁判が使われるかどうかを予測することは、不可能かつ無意味である。利用が増えることは、法専門家にとって、喜ばしいことであろうが、増えなかったからといって、今回の立法が失敗したということにはなるまい。

 今回の改正はむしろ、そうした大きなところをにらみながらも、裁判関係者の中だけでやれることを、かつ、訴訟法に限定して、できるだけやってみようした法曹関係者の前向きな職場改革運動だとみたほうがいい。利用した当事者の充実感、それを前提にした法専門家の充実感、これを拡充しようとしたものだと理解したい。利用者むけにいわば「営業用」の言葉を交わしながらも、改革に向けた職場内でのするどい利害対立とその調整が行われる。一般の組織でもよくある、そんな構図が今回の民訴の改正経過でも見て取れるし、また指摘もされている。

 ただ証拠収集の拡充については、「職場内の関係者」である法専門家間の調整では処理しきれず、なんとか改正立法を成立させようとする立法関係者は「職場外」との調整に苦労せざるをえない。「現状よりは一歩前進」というところで「実現可能性」を目指したとしてもそれを一概に非難することはできない。
 しかしその結果、職場内には「不満」が残ることになる。実際、今回の証拠収集手続の改善のありかたには、学界からも弁護士会からも、そして裁判所の中からも、できた規定のあり方、立法化されずに落ちた制度、その双方について今後も不満が述べられることと思う。しかし、民訴の世界は、柔軟である。学説も柔軟であるが、実務は弁論兼和解の定着過程に象徴されるように、より以上に柔軟である。できた規定がどうあれ、『実情』に応じた解釈・運用が法技術を駆使して展開されていくことになろう。

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この文章を書いたあと民事訴訟法がまったく新しくなり、しかもその後、改正を見ています(平成15年)。
わずか10年の間ですが、法科大学院も設立され、世の中、大きく変わりました。でもこの10年前の文章はまだ生きているように思います。証拠収集を拡充し、計画審理を進める。この方針のうち、計画審理だけはどんどん進行していますが、証拠収集の拡充は、実質的には実現していないように見えます。だからどうなんだと言われても困るのですが、計画審理は平成8年の時にはそれほど声高ではなかったのです。いつの間にこんなに審理の迅速が至上命題になってきたのか、実に不思議です。


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