« 市町村申立て全国調査 | トップページ | 急ぎの仕事 »

2006/04/24

Garrow's Lawyers 2

 Garrow は有罪になり、1974年8月1日に25年から終身までの不定期刑を言い渡されます。事件は刑事司法としては一応、決着がついた格好なのですが、このケースはこのあとがすごいのです。
 全米が、二人の弁護士の弁護活動に批判の眼を向け始めたのです。写真は証言のあと法廷を出るGarrowです。Garrow01


 Garrow に対する判決のあと、世論は二人の弁護士の弁護活動に向かいました。事件から公判まで1年ものあいだ、二人の行方不明者が死んでいること、および遺体の場所を知っていたのに、それを秘匿し続けて弁護活動を展開したことが、市民の批判を招きまました。
 二人の弁護士は、公判直後に記者会見し、「被害者が発見時になお生存していれば、その生命を救うために、たとえ被告人に不利をもたらすとしても当然にしかるべき連絡措置をとったてあろうが、被害者はすでに死亡していて、その結果は如何ともしがたい状況になっている以上、むしろそうしないのが弁護人の義務である」と断言しています。

 ニューヨーク州の市民は、この弁護に大きな衝撃を受け、地区検事はついに大陪審(起訴するかどうかを決める陪審)を召集し、二人の弁護士のうちBelge 弁護士だけを死体の埋葬および事故死体発見者の告知義務に関する公衆衛生法違反の容疑で起訴したのです。

 Armani は起訴されませんでした。二人の処分を分けたのは、Belge が写真をとり遺体を動かしていた点を重視したからだといわれています。

 Belge 弁護士に対する裁判は、第一審も控訴審も公訴棄却であった。この手続きでは、Belge の弁護人は、連邦憲法修正5条の弁護人の守秘特権を主張し、全米刑事弁護人協会も、法廷の友として準備書面を提出し、Belge が有罪になるようでは、依頼者・弁護人間の通信の秘密の特権が失われると主張した。公訴棄却は、要するに刑事立件にあたらないという判断であってBelge 側にとってもっとも有利な判決です。

 他方、被害者Aliciaの遺族からは、ニューヨーク州の懲戒委員会へ、二人の弁護士の懲戒申立てが提出されました。こちらのほうも申立は棄却されています。適切な弁護活動をするためには、弁護人は依頼者からすべての事実を語ってもらうことが必要であり、そのためには、守秘義務が確保されなければならない、というのがその理由です。


 弁護士の職業上の倫理の考え方としては、懲戒委員会の説明は筋が通っています。しかし、世論の批判はとどまるところを知りません。そこのところの中心的課題を、中村治朗裁判官が言い当てています。弁護士でなければ遺体を発見すれば通報するだろうし、家族に聞かれれば教えるだろう、それが人間の倫理だと述べた上で、次のように書いています。「普通の人間ならやれないこと、またはやってはならないことでも、弁護士としての職業上の目的を遂行する上で必要ならやってもよく、また原則としてやらなければならないことになるが、それでよいのであろうか」

 ここでは職業道徳(専門性)と人間道徳(人間性)が対比されている。職業倫理と人間倫理が衝突する場面は、法曹倫理だけに限らないのですが、Lake Pleasant 事件は、弁護士活動でこれが生じることを劇的な形で人々に教えたのです。

続く

|

« 市町村申立て全国調査 | トップページ | 急ぎの仕事 »

Garrow's Lawyers」カテゴリの記事

法と弁護士」カテゴリの記事

コメント

今朝、書き込んだときには、Garrow の刑を25年と書いたのですが、あらためて当時の新聞記事を読みますと、a 25 year to life sentence と書いてあり、これは25年から終身にいたるまでの不定期刑なのかと思いますので、訂正しました。そう読んでいいのかどうか、刑法の専門家のアドバイスがほしいところです。

投稿: satosho | 2006/04/24 14:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73618/9740206

この記事へのトラックバック一覧です: Garrow's Lawyers 2:

« 市町村申立て全国調査 | トップページ | 急ぎの仕事 »