PACガーディアンズ講演会
講師は、初回にふさわしい戸枝陽基さん。知る人ぞしる知多半島の風雲児、全国から注目を浴び続けて、活動をどんどん広げていっている「むそう」の理事長です。いまは全日本手をつなぐ育成会の理事で、機関紙手をつなぐの編集長としても有名です。
今回は、その戸枝さんが知多半島で障害者向けの法人後見を始めているとお聞きし、ぜひ我々もお話を伺いたいとお忙しい中、時間を割いていただきました。

脱施設は在宅ではない、この話から始まりました。
パワーポイントやふそうの活動ビデオを駆使しながら、ご自身の知多半島での事業活動を詳細に説明され、地域福祉のありよう、そしてそこでもし成年後見を行うとすれば、「専門性の高い人よりも本人さんを常時みている隣人のような人が重要であり」、後見活動は、非常に期間が長くて、介護者が本人より年上であることが多いという、高齢にはない特徴を、非常にインパクトのある形で語ってくれました。
いずれの主張もわれわれガーディアンズの活動と共有できるものですが、このことを、これだけインパクトをもって語れる人は、他にはいない。
いっけん成年後見とは関わりがないような福祉そのものの話がずっと続くのですが、実は、それが障害者の後見にはとても大切な話であることが、聞き終わってみると良く分かります。
そして直接の支援事業だけでなく、障害者の生活を包み込むような支援事業が大切であるとして、7つほど環境的なお話をされましたが、その中のひとつが成年後見であり、戸枝さんのところでは、サポートちたという、みずから事業を行わない法人を作って法人後見に乗り出しているとのことでした。みずから事業を行わないのは、いうまでもなく利益相反を意識してのことです。
このサポートちたを立ち上げるきっかけは、一人のお母さんの訴だったそうです。ふわりを立ち上げた5人のお母さんの一人が、末期ガンで余命6ヶ月を宣告されて、母一人、子一人であったため戸枝さんに全財産を預けて子供を託そうとしたそうです。自分の信頼する施設長に死の間際に全財産を託そうとする親御さんの話は、私もあちこちでよく聞きます。福祉施設の施設長である人は、親からそれぐらいの信頼を得る人が多いのです。しかし、そのときに全財産を個人や法人で預かる施設長は稀です。戸枝さんもそうです。死が刻々と迫っているお母さんと戸枝さんが、周辺の親御さんを巻き込んで、新しい成年後見の法人を作ろうとしたのは、これがきっかけだそうです。
このお母さんは、余命いくばくもない状態であるにもかかわらず、あちこちの会合で法人設置の必要性を説き、ついに周辺の親御さんを説得しきったのです。法人が設置され、息子さんの法人後見が裁判所から認められ、死の間際の母親と戸枝さんとの間で別れの会話が行われたところに話が及ぶと、会場のあちこちでハンカチで目をぬぐう人がいました。私もその一人です。
さてこのサポートちたは、スタッフにかなりの高学歴の若い母親たちを擁しているところが特徴です。また、運営協議会という社会福祉士、弁護士会のバックアップを受けた監督機構を設けている点も学ぶべきところでしょう。いくつかの経営上の工夫もありました。しかし、当面、公的なバックアップがどこかでないと、運営の将来はないと明言されました。他の方の発言の受け売りだということで、次のような言葉を最期にいわれたのが印象的です。「福祉の世界に市場原理を導入するのがいまの流れだ。しかし、そうであるならば市場原理で動く社会でこぼれてしまう人々を支援するのは、行政の責任だ」。なかなか味わいのある言葉です。
講演が終わっていくつかの考えが頭の中をあちこちしています。
1) 知多半島(もっというと半田市)の母親はすごい。戸枝さんもすごいが、その戸枝さんを動かしている(動かざるを得ない状況に追い込んでいる)のは、親たちなのだという想いです。誰かが自分の子供に会う制度を作ってくれるまでまっていようなんて受身の親御さんはどうも知多半島にはいないような感じがします。
2) 多数の事業主体、相談支援者、そしてサポートちた(後見センター)の連携と緊張関係がうまく取れている。これはしかし、全部に戸枝さんが関わっていますからあたりまえといえば当たり前かもしれません。翻って他の都道府県(たとえば千葉県内)では、それぞれ意見が違うところがあるので、なかなか連携が難しいかもしれません。だが逆に考えれば、ここに橋頭堡を築ければ、活発な(人の見える)後見活動の可能性が開ける、そんな気もします。
いろいろ考えます。でもその素材をいただいた戸枝さんに、今日は文句なしに感謝です。
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