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2006/07/06

民法709条と親の監督責任(1)

民法709条による親の監督責任を緩和する傾向を示した最高裁判例が出ています。
すでにあちこちのブログで紹介されていたのですが、最高裁HPに掲載されるのを待っていたら遅くなってしまいました。別にこのブログでは、速さを競うつもりはないので、これでいいと思います。

最判平成18年2月24日(判例タイムズ1206号177頁 判例時報1927号63pに掲載されています)。最高裁の公式判例集である民集には掲載されないようですが、WEB上では、公開されています。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=24930&hanreiKbn=01


 この事件は,少年院を仮退院して保護観察に付されていたA,B及びC(以下3人まとめてAら)が集団で被害者に暴行を加えた傷害事件に関して,被害者が,親には,当時未成年であったAらの親権者として,① 親の下で生活すること,② 友達を選ぶこと,③ 定職に就いて辛抱強く働くことなどの保護観察の遵守事項をAらに守らせ,また,これらが守られない場合には,Aらを少年院に再入院させるための手続等を執るべき監督義務があったにもかかわらず,これらを怠ってAらを放任したために,上記傷害事件が発生したものであると主張して,親に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案です。
 この被害者側の主張に対し、札幌高等裁判所は、親たちは未成年者への対応を一応はしていたし、強盗傷害事件の発生を具体的に差し迫ったものとして予測させるような特段の事情や情報に接していなかったのであるから、被害者側が主張するような義務があったとは言えないとして、被害者側の主張を退けています。
 被害者側から上告受理(最高裁へ上告する方法の一種・法令の解釈適用の誤りを理由にするものです)の申立てがあり、最高裁がこの申立てを取り上げた上で、原審の札幌高裁の判断を踏襲する判決を書いたものです。わざわざ上告受理を取り上げて、原審とほぼ同じ判断をしたのですから、なにかそこに最高裁としての考えがあったと言えるのかもしれません。
 ①や②③の上告側の主張は、いかにも被害者らしい主張ですね。そのような主張をしたい気持ちは分かりますが、これができたらどんなに親は楽なことか。事件を起こしてしまったという結果からみた立論です。親としてできればすばらしいことだけど、必ずしもできないこと、その責任を取れと主張しているといっていいでしょう。
 履行できないことなんだけど、親である以上は責任をとれ、このような責任追及から逃れられる方法は、1)親であることをやめること(つまり子供を生まない)、2)子供を家の中に閉じ込めておくこと(これは別の責任を発生させるでしょう)ぐらいでしょうか。およそ背理なのですが、被害者感情は、こうした主張を触発させています。

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コメント

最高裁サイトのリンクが間違っていましたの訂正しました。失礼しました。
名川さん、ご指摘ありがとうございます。

投稿: satosho | 2006/07/07 13:29

momoさん、さっそくありがとうございます。僕もいい判決だと思うんです。。(2)を明日あたりに書きますね。

投稿: satosho | 2006/07/06 10:25

やっぱり・・・ここで扱っていただけるかなと思っていました(自分とこで、書きなさいって(苦笑)!)。714条が使えなければ709条で、という形で、どんどん親の責任が加重される傾向にある中、理想論ではなく、実質的な視点から判断した、よい判決だと思います。親である、というだけで、どこまでの「監督」が期待できるのか・・・かつて、小人数クラスでこの問題を扱ったとき、下級審を含めたいろんな判例に目を通しましたが、「こんなことまで、親が責任とらなきゃいけないのか」と驚くような判断がたくさんありました(同様に、過失相殺のところでも、被害者側の過失として親の事情が大きく考慮されているものがあります)。被害者の気持ちは分かりますが、裁判所は、それに引きずられてはいけない・・・「じゃあ、どうすればよかったんだ」という親の問いに、きちんと答えられる判決でなければならないでしょうね。

投稿: MOMO | 2006/07/06 09:47

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