In a deferent voice?
残余型福祉モデルを基調にする母親研究の家族描写は、いささか暗い。たしかにネガティヴな側面も障害者家族関係の中にあるかもしれないが、みんながみんな心中に至るわけではない。中根さんの本は、母親研究を継承しつつも、そこへ父親研究を重ね合わせることで、視野を広げてくれているように思える。
母親研究で記述された父親のネガティヴな姿は、父親研究では様相が違う。ジェンダーによる抑圧者ではなくて、母親とおなじく障害をもつ子供に動揺しつつ、母親と同じようなケアができないことに困惑する父親がいる。母親のものマネをすることもできず、経済的基盤の確保と心の配慮で母親と子供へのケアを尽くそうとする父親がいる。そこに見え隠れする父親は、ケアを放棄し母親にすべてを押し付けている父親ではなく、母親とは違うタイプのケアを行っている父親である。違う種類のケアが家族の中で行われている。母親が二人いても仕方がないし、父親が二人いても仕方がない。これもジェンダーの抑圧の論理であるといえばいえなくないだろうが、父親にはまた違う論理があるのである。これも一種のIn a deferent Voice である。
そして複数の種類のケアが複数の人間によって分担して実施されていることは、障害のある人の自立とうい点からみて好ましい。独占や囲い込みが緩和されるからである。
家族の中の相互関係は種類の異なるケアが協調することで、形成・安定されるのであろう。しかし、父親も母親もいずれ老いる。親なき後への不安は、二人にともにのしかかる。これをどう乗り越えるか。これが難問なのである。
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