父親研究
ここ数日、中根成寿(なるひさ)さんという人の「知的障害者家族の臨床社会学」明石書房(2006)という本を読んでいる。もとより本業の傍らにヒマを見つけては読むというありさまなので、本業だけでもアップアップのいま、読み進むスピードはイヤになるほど遅い。しかし、この本は、どんなに忙しくても読み飛ばすことなく最期まで熟読したい。そんな本である。
知的障害者の家族に焦点を当てた社会学的考察は、著者によればすでに数冊あるそうだ。要田洋江(ひろえ)さんの障害者差別の社会学(1999・岩波書店)は既に知っていたが、土屋葉さんの本もあるらしい。土屋さんのは持っていなかった。さっそく購入しよう。
これら諸研究は、障害者家族のいわゆる質的研究である。家族が置かれた状況を当事者たちの語りを素材にして浮き彫りにしていく。中根さんという飛び切り若い研究者の手法もおなじく語りに着目する質的研究である。その記述は、どれもこれも面白い。そして、要田さんの本を読んだときもすごいと思ったけど、中根さんの仕事ですごいなと思うのは、それまでの先行研究が母親の語りに比重があるのに対して、彼は父親の語りを採集し、整理することに成功している点である。
著者によって整理された知的障害者の父親の姿(それは成年期に達した知的障害者を子供に持つ初老の父親たちである)は、同じようなポジションにある私の目から見てうなずける描写になっている。単にうなずけるだけではない。もやもやとしていたものが、とても上手く記述されていて、そうだったんだと、自分で自己の再認識をさせられる点が多々ある。
それだけでもとてもいい本だと思うのであるが、この本が父親分析から展開している議論がまたいい。ケアの社会的分有なのである。これをもうちょっと書いてみようと思うけど、今日はこれぐらいにしておこう。
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