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2006/09/20

弁護士会の裁量

 一週間ほどまえの14日に最高裁が法曹倫理の関連で重要な判例を出している。数日後には、最高裁のサイトに掲載され、すでにあちこちで紹介されている。それだけ最高裁としても重要だと考えているのであろう。
平成18年09月14日最高裁判決
 「弁護士に対する業務停止3月の懲戒処分が裁量権の逸脱又は濫用に当たらないとされた事例」
 この判決の掲載場所は、下記である。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=33526&hanreiKbn=01

 事案は、オフィスの明渡に絡んで、店子側の交渉代理人となった弁護士が、明渡条件の再交渉に臨んで賃貸人側から追加明渡料300万を預かったことを、依頼者である賃借人(外国法人であって、海外への送金手続が必要になる)に報告せず、また後日、その300万を賃貸人に返還したことも報告していない、というものである。

 弁護士会は、業務停止3ヶ月の懲戒処分にしたが、取消訴訟を受けた東京高裁は、弁護士としての品位を欠く行為にあたらないとして、処分を取り消した。弁護士会の処分を裁判所が取り消すのは結構まれなことかと思う。日弁連の上告を受けた最高裁が、大要つぎのように判断して東京高裁の判決を破棄し弁護士会の処分を維持する判決を下したのである。

 「弁護士に対する所属弁護士会による懲戒の制度は,弁護士会の自主性や自律性を重んじ,弁護士会の弁護士に対する指導監督作用の一環として設けられたものである。また,懲戒の可否,程度等の判断においては,懲戒事由の内容,被害の有無や程度,これに対する社会的評価,被処分者に与える影響,弁護士の使命の重要性,職務の社会性等の諸般の事情を総合的に考慮することが必要である。したがって,ある事実関係が「品位を失うべき非行」といった弁護士に対する懲戒事由に該当するかどうか,また,該当するとした場合に懲戒するか否か,懲戒するとしてどのような処分を選択するかについては,弁護士会の合理的な裁量にゆだねられているものと解され,弁護士会の裁量権の行使としての懲戒処分は,全く事実の基礎を欠くか,又は社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り,違法となるというべきである。」

 弁護士会の会員に対する懲戒権について、司法審査のありようを論じた初めての最高裁判決であって、影響するところは大きい。弁護士会の処分について裁判所が、異論を挟むのは、よくよくの場合である、ということなのであるが、いうところの「社会通念上著しく妥当性を欠き」という場合の、社会通念がなにかが微妙である。このケースでも別段、依頼者の預り金を弁護士が着服したわけでもなく、相手方との交渉経過、とくに明渡料金の積増についての交渉経緯を説明していなかったことが懲戒対象になっている。それで業務停止 3ヶ月が妥当かどうかは、判断が大いに分かれるように思う。
 しかし、判断が分かれるようなものについては、弁護士会の判断を尊重しようということであろう。そうすると日弁連の懲戒処分に対して会員弁護士が裁判所へ提訴するのは、ほとんど意味のない行為となろうか。
 議論を呼ぶに違いない判決である。

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