学校の安全配慮義務
施設や学校内での安全配慮義務は、なかなか判断が難しい。私もいろいろ勉強をしなければならないと思いつつ、なかなか手が着かない。昨日、判例時報を読んでいたら、次のような事件が掲載されていた。
市立小学校の養護学級1年の児童が心的外傷後ストレス障害を再発し、不登校となったのは、同校の校長の児童に対する安全管理義務に違反する行為によるつぃて、市の損害賠償責任が認められた事例
大阪地裁判決平成17年11月4日判例時報1936号106頁(確定)
なにげなくみていると読み落としてしまうが、この事件は昨年に言い渡しがあったときに新聞などで盛んに取り上げられた事件である。原告(母親)の代理人を務めたのは、有名な辻川圭乃弁護士。以下は毎日新聞の当時の記事である。
「PTSD訴訟:給食を無理に食べ悪化 学校側の責任認める
小学校の無理な給食指導で心的外傷後ストレス障害(PTSD)が再発し不登校になったとして、大阪市住吉区の市立小学校5年の広汎性発達障害の男児(11)が同市に慰謝料など計約330万円の賠償を求めた訴訟の判決が4日、大阪地裁であった。横山光雄裁判長は「校長は男児に配慮すべき事項について担任教諭らに周知する体制を整えなかった」として学校側の安全配慮義務違反を認め、約130万円の支払いを命じた。判決によると、発達障害と知的障害がある男児は、1歳半で通い始めた保育園で保育士らから「給食を食べないとお化けがでる」などと言われ、突然泣き叫ぶなどのPTSDを発症した。00年に知的障害児の通園施設に移り、症状は改善した。
01年4月、小学校に入学し普通学級に入った。母親は入学前、校長や養護担当教諭と懇談した際に、給食を強制しないよう求めた。しかし担任教諭には給食に関する引き継ぎがなく、担任教諭はスプーンにおかずを乗せて男児に勧めるなどし、同月下旬、男児は突然パニック状態になり、5月の連休明けから不登校になった。
横山裁判長は男児が給食を無理に食べてPTSDが悪化し不登校になったと認定。「校長は母親から積極的に詳細な聞き取りをし、各場面での注意すべき事項を整理して担任教諭らに周知する義務があった」と請求額全額を損害と認定した。ただし、母親の学校側への説明不足もあったとして、過失相殺として6割を減額した。」毎日新聞 2005年11月5日 9時27分
判決当時は、控訴されるのではないかと、私の周辺でももっぱら話をしていたのであるが、どうやら控訴されずに確定したようである。新聞には普通学級と書いてあるが、養護学級の間違いであろう。確定したということは、判決文には表れない、判決後のさまざまな折衝があったことが予想されるが、原告代理人の努力に敬意を抱くと同時に、市側の穏当な判断に拍手を送りたい。
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コメント
この判例で評釈を書いていただけるとはうれしいですねえ。辻川さんも喜びますよ、きっと。
確かにご指摘のとおり、位置づけが難しいです。この事件の結論として請求が認められたは、良かったと思いますが、発達障害児が不登校になった場合のすべてで安全配慮義務違反が認められるわけではないでしょうし、京都の向ヶ丘養護学校の例では、不登校とではなくパニックに伴う自傷行為で失明した事例ですが、配慮義務違反を否定しています。下記です。
http://www.satosho.org/satosholog/2005/04/post_4946_2.html
かといって学校に安全配慮義務はまったくない、何が起きても責任はないなどという主張も成り立たないでしょうから、専門的に論評するとなると、ほんとに手がかかるし微妙な判断(あるいは新機軸)を要求されるかと思います。
でもMOMOさんに書いてほしいです。ほんと。事前に研究会が必要とあれば、セットしまっせ。
投稿: satosho | 2006/09/29 00:13
法学界での「発達障害」への理解を促進する目的もあって、紀要に、この判例の評釈を書こうと思って調べているんですが、この判例自体の位置づけも非常に難しい。いろいろ悩んでいる間に、もう講義再開間近(うちは、9月末からなんですが)・・・それにしても、確定したんですねぇ。
投稿: MOMO | 2006/09/28 10:15