札幌育成園事件
発達障害白書2007が出版されている。昨年までとは版型が代わり大きくなった。本箱の入れる場所を変えなければならない(苦笑)。
そのなかで、権利擁護活動で著名な大石剛一郎弁護士が、障害者の財産保護をめぐる動きと題して札幌育成園の事件を紹介しながら興味深いことを書いている。この人はいつもいい文章を書く人だ。
「一生の生活を支援することを前提条件として、本人に入ってくる年金等の収入および所有財産の全部について、支援者がそれを管理し、支援者が本人の利益ないし本人同様の境遇の人の利益になるように、支援者の裁量でそれを処分する」このような対応は、発達障害者福祉の現場において、多かれ少なかれ、あまり抵抗感もなく行われてきたことのように思われるが、それは本人の真意あるいは客観的利益に沿うことがよほど厳重な形で確認されていないかぎり、発達障害者本人の「主体性」を無視した違法行為といわざるを得ない。」発達障害白書2007 134頁
大石弁護士によれば、このことを明確に示したのが札幌育成会事件控訴審判決だという。この事件はインターネット上で全貌を把握するのが難しい。わたしもまったく関与していないので、詳細はわからない。札幌と東京で提訴が行われており、札幌事件の相手方には、入所施設の法人と銀行と道庁などが被告になっており、入所施設の法人に対して札幌高裁が原告の請求を認める判決を言い渡し(第一審は原告敗訴・銀行などでは第二審も敗訴)、大石さんの文章によれば、どうも最高裁までいって今年の4月に高裁判断で確定しているらしい。
東京事件は、東京都と日野市が被告になっており、こちらは第一審原告敗訴でいま第二審に係属中である。
大石弁護士が引用するのは札幌事件の控訴審判決であり、これがまさに、この事件の核心である。
この判決については、少し古いが共同通信の記事を引用しておこう。
元入所者が逆転勝訴 札幌高裁
社会福祉法人「札幌育成園」(札幌市)の知的障害者更生施設に入所していた札幌市の松岡敏雄さん(45)が、障害年金を横領され、労働した賃金も払われなかったとして、育成園などに約2300万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、札幌高裁(伊藤紘基裁判長)は25日、請求を棄却した一審札幌地裁判決を取り消し、育成園に計845万円の賠償を命じた。道などに対する請求は一審同様退けた。
(共同通信 2006年10月25日 17時00分)
この事件の論点は多岐に渡るが、私がここに指摘したいのは、入所施設というものが利用者の財産(そして生活)に対してもっている圧倒的な支配力ということである。しかもその支配力を行使する施設・法人自体も、自分が支配していることによほどのことがない限り気がつかない(気がつけない)という事態である。
そして、これが一番問題なのであるが、施設利用者の家族も、そのことに気がつかない。そのことで誰が困るか。利用者である。いくつかの有名な施設が問題を起こす、その背後には、こうした気がつかない「支援の慣れ」が生じているのではないか。カリタスの家の問題もそうであった。しかし、いまはそうした事態になっていることを、外部で気づく人が出てきており、改善の兆しがある。と同時に、そのような事態をさらに悪化させるような動きもある。それは法人後見の動きである。これは、記事をあらためて書く。
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