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2007/02/04

入所施設の法人後見 1

  障害者の後見問題の論点のひとつに、個人後見か法人後見かというものがあります。法人後見は、平成12年の成年後見法の制定のおりに入った新しい制度です。今回は、この問題と入所施設の後見問題を考えてみたいと思います。まずは法人後見と個人後見から。

 私自身は、「目の前の人に対して、そのひとにふさわしい支援を行う」という観点から、個人後見を基本にすべきであると考えていますが、親の会や関係者の中には法人後見を志向する方が多いようです。障害者ご本人の個別特性に合わ せた後見支援ができるのであれば、どちらの形態でも実質は同じですから、あまりこだわりたくはないし、個人の後見人がどうしても見出せない方(精神障害の 分野ではちょくちょくあるようです)の場合、法人後見しか(それも多くの場合市町村申立てになりましょうか)現実的には選択肢がありません。というわけ で、私は、個人後見を基本にしながらも法人後見を否定するつもりはありません。
 ただこの国の場合、法人後見待望論ないしは法人後見万能論とも思える論調が成年後見推進論者の中に散見されますので、とても心配しているのです。この点は前にこのブログで書いたことがあります。
http://www.satosho.org/satosholog/2006/07/ha_c012.html

 法人後見を基本に考える方は、いくつかのメリットを主張されます。すぐに浮かぶのは次のふたつです。
① 法人が独自に財源を稼げば、障害者本人から報酬を取らなくても済む。(費用問題)
② 法人さえしっかりしていれば、個人後見のように後見人死亡による交代を考えなくてよい。(継続性問題)

 費用問題についていえば、法人後見を実際に受任して活動が先行している法人組織では、ご本人から費用を取っていないか、取っても名目的な金額で、後見活 動は法人自体の財源でまかなっているところがあります(複数あります)。これは年金収入しか期待できない障害者にとっては、確かに素晴らしいことです。

 しかし、そのためには、当然のことですが公費による援助が必要です。幾つかの地方自治体が沢山の資金援助を後見法人に対して行っています。つまり障害者個人か らは費用を取らないのですが、社会が費用を負担しているのです。その負担額は、利用者一人あたりに換算すると結構な額になるようです。これは考えてみれば 当たり前で、個人対個人の支援を基調にする場合、法人後見であっても専任スタッフを個人に張り付ける(担当者制をひく)ことにならざるを得ないのですから、けっして利 用者個人・個人にかかる費用が低減することにはならないのです。
 このように社会全体で見たときの費用負担は無視し得ないのですが、他方で、障害者個人から費用徴収をしなくてよい、これは捨てがたい魅力です。個人後見を基本にしたとしても、障害者個人から費用を取るシステムでは、おそらく説得力や現実性を持ち得ないと思えます。

 他方で、社会的な負担は決してバカにならない額になるので(現在の法人後見の社会的負担は、個々人を対象とした弁護士後見の後見報酬(月額3万程 度)をはるかに超える額です)、成年後見の利用者が爆発的に増えて、それを法人後見でまかなうための法人を設立するとなると莫大な公費負担が発生すると予 想されます。そのような国民的合意が、果たしてできるのか、ここらあたりが法人後見の費用面での課題です。

 もっとも社会的負担がバカにならない額になる点は、個人後見であっても同じで、障害者本人から後見人報酬を取らない制度を考えていくと、どこかでボランティア型の後見人活動を期待しつつ、かなりの公的資金の供給を予定しなければならないでしょう。ただ弁護士後見人を二人つけた場合よりもはるかに高い金額に、利用者一人あたりになってしまう法人後見の仕組みは、それでも不思議なところがあります。

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コメント

ちょっと長すぎるのと説明を加える必要があると思いましたので、文章を訂正しました。(07/2/04 Sun pm:17:53)

投稿: satosho | 2007/02/04 17:53

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