入所施設の法人後見4
入所施設の法人後見の話しはどこが危ないのか。理由はいくつがあります。
① 形式的には、利用契約をどうするんだというものがあります。契約申込者A後見人X法人 契約相手方X法人となります。同じ人格が、契約の申し込みと承諾を行うことになりますので、たとえ後見監督人の社協のサインがついていても、民法上は効力はどうなるのか。
② 施設に対してクレームや訴訟を起こすときはどうするんだろうか。施設に対して利用者が法的手続きを起こす必要がある場合はあります。年金管理がずさん だ、預金を横領された、あるいは虐待を受けたなどなどです。訴訟を起こす場合は、後見人が起こすことになりますが(民訴31条)、それは相手方である施設 です。はてさてどうしましょうか。その場合は、後見監督人が訴訟を行えますが(民法851条第4項)、現実的な話でしょうか。そうは思えません。つまり、 利用者が施設に対してクレームを立てることを念頭に置かない法人後見ではないか、そう思いえます。
③ もっと深刻な問題は「誰が後見業務をするのか」です。施設のスタッフでしょう。この人たちは、利用者本人と一番、身近で接している人たちです。いわば 親なきあとに、ご本人のニーズや個性をいちばん理解している人たちです。その意味では、この人たちが後見業務を実際に行うのは理想的です。ですが、一人ひ とりに対応した担当者ではありません。
Aさんが施設の食事に不満をもっている。しかしBさんは、それに満足している。そのときに誰がAさんの声を代弁するのでしょうか。誰がBさんの声を代弁するのでしょうか。Aさんの担当者もBさんの担当者も同じ職員であったとすればどうなるのでしょうか。
④ お引越しはどうなるのか。利用施設を代える場合(たとえば入所施設からグループホームへ移る、グループホームから別のグループホームに移る)などの場
合、だれがその判断をするのでしょうか。その適否はどう判断されるのでしょうか。同一法人内で移る場合はまだいいにしても、違う法人の施設に移ると決まっ
た場合、後見法人の変更申立てを裁判所にするのでしょうか。それが許可になった場合、担当スタッフも一緒に転属するということになるのでしょうか。
あるいは現在の利用法人以外に移ることを、そもそも念頭に置かない制度なのかもしれません。つまり利用者は、その施設の中だけで毎日を生き、その施設の中で死んでいくことを前提とした後見制度なのかもしれません。
⑤ 法人をあげて海外旅行をすることにした。その費用を障害者基礎年金の中から積み立てる、あるいは預金のある人は、その中から捻出することにしたい。し かし利用者の中に、その旅行には参加したくない人がいた場合(飛行機に乗れない・パニックになるなど)、その人の意向は誰が施設に伝えるのでしょうか。担 当職員でしょうか。後見監督人である社協がやるのでしょうか。弁護士などからなる監督委員会にその判断が委ねられるのでしょうか。担当職員が伝える場合 に、それは後見スタッフとして伝えるのでしょうか、それとも施設職員として伝えるのでしょうか。
いろいろ考えていくと、入所施設の法人後見は、たとえ社協が後見監督人になっていたとしても、もろ手を挙げて賛成することはできないように思います。それは、本人の権利擁護を考えた後見ではなくて、親と施設の便宜を考えた後見利用であるように思えるからです。
では、どうすればよいのか。現実に対する対案を示さないで批判的なことばかりを書いてもやはり空論だという批判を受けるでしょう。
法人後見であれ個人後見であれ、後見はやはり外部の人が関わるべきであり、そうした外部の後見を受ける、あるいは支援する法人を早急に作る必要があるの
ではないでしょうか。人里はなれた入所施設が、後見もなにもかも一手に引き受けて、誰も会いにこない、訪れる人もいない、そんな現状にあわせる後見利用を
考えるのではなくて、一人の障害者に多くの人が関わるしかない後見利用のあり方を考えるべきであるように思います。いま市民後見人の養成がはじまりつつあ
ります。弁護士だっていずれ12万人になるという話なのですから、マンパワーとしては期待が持てます。障害当事者の家族が、家族外の方の後見人になること
もありえるでしょう。やはり複数の方々がかかわり、引きついでいく、そこへ話しが行き着きます。
問題は金です。費用です。いまはあまりにも安上がりな利用促進が謳われています。安上がりな利用では、どのような形態であっても、入所施設の利用者一人
ひとりによりそう後見支援は難しい。そう思います。右を向いても左を向いても、後見利用促進の大合唱が始まっています。私も、基本的には後見利用は促進す
べきだと考えます。しかし、よほど慎重に行わないと、権利侵害を促進することになりかねない、しかも障害者本人からみれば、その侵害は長期にわたることに
なるのです。そんな心配からあえてブログに書いてみました。
最期に「入所施設の法人後見」問題として、考えてきましたが、私は「施設」対「地域」という二項対立的な問題設定をしているわけではありません。基本的 な問題はグループホームのバックアップ法人が後見業務を行う場合にも、そして親が後見人になる場合にも妥当するところがあるように思います。ただグループ ホームの場合は、関わる人と空間が圧倒的に大きい。要は、ケアの分有がどこまで計れるか、なのですが、安上がりの利用促進では、ケアの分有どころか、気が ついたら地域の中での「孤立」あるいは施設による「独占」が長期化した、ということになりかねないのではないでしょうか。
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