自然物は原告になれない
講義で「当事者」の話をする際に、学生のみなさんの関心を惹起する目的で動物裁判の話をしました。そうすると学生の皆さんからも情報をもらいました。とても全部は紹介できないのですが、いくつか紹介しますね。
アマミノクロウサギ判決
鹿児島地裁判決 平成13年01月22日
これは行政処分無効確認及び取消請求事件です。
、新聞などでとても大きく取り上げられて有名な事件ですね。現行法では、当事者能力は認められないと述べていますが、自然の保護についての法的な考え方がいろいろ展開されていて、読み応えのある判決文になっています。原告にあげられたアマミノクロウサギなどの訴訟の部分は、手続の最初の方で却下されていますが、残りの自然人の原告が「動物の代弁」を行い、この方々の訴訟のほうが適格がないということで却下されています。
最高裁のHPで閲覧できます。こちら
民間のものはこちら
(イリオモテヤマネコ判決)
H15. 2.26 東京地方裁判所判決(平成14年(ワ)第23454号 リゾート開発差止請求)これは通常民事の差止請求です。民事訴訟法28条にしたがって、動物の当事者能力を否定しています。
http://www.kamisama-tasukete.com/archive/genkokutekikaku.htm
ムツゴロウ裁判
平成17年3月15日長崎地裁判決
ムツゴロウを原告にした訴訟です。
どうも詳細がよくわからないのですが、民事訴訟での差止でしょうか。町村先生のブログに紹介がありました。
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2005/03/jugement.html
サンゴとコウモリ東京地裁へ
(新石垣空港設置許可取消訴訟)
これは、現在まだ係属中です。行政訴訟です。
http://www.satosho.org/satosholog/2006/06/post_a1f6.html
http://www8.cds.ne.jp/~nature/shirahonokai/information.html
サンゴやコウモリの請求は、手続の早い段階で却下されているようですが、その後も自然人の原告が「代弁」しているようです。
民事訴訟で使われる形式的当事者概念からみれば、これらの自然物は、当事者ですが、当事者能力がないのですから現在のところ却下はやむをえないでしょう。自然人や「なになにの会」がそれを「代弁」するとなると、その人たちの当事者適格が問議されることになりましょう。
高橋宏志「重点民事訴訟法上」153pでは、富士山の「法定」代理人という構成を民事訴訟法69条2項の拡張解釈で考察しています。当事者能力のない原告の法定代理が成立するかどうかは難しいところですが、高橋先生は二転三転されてつつも、形式当事者概念と当事者能力の規律の不整合を指摘されているようです。
この種の訴訟の焦点は、実際に訴訟活動をする「人」や「団体」に自然を代弁する能力・適格があるか否かの問題です。アマミノクロウサギ判決も、そうした観点から判断しているわけです。でもこの問題、深みにはまるとどこまでいくのか、ちょっと怖いところがありそうです。
ここにもいろんな情報がありました。自然の権利
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コメント
ムツゴロウ裁判は、学生さんから引き続き情報をもらいました。やはり民事の差止訴訟のようですね。しかも諫早湾まで原告になっている。
投稿: satosho | 2007/05/23 00:55
おしゃれキャットってアニメは見たことないのですが、現実にありそうな話ですね。法主体論や権利論までいくとほんとに楽しいけど、私にはわからないことだらけです。講義ではもちろんそこまでは話しません(苦笑)。
動物や自然の「代弁」となると、やはり団体訴権の方向になりますかね。最近はいろんな活動団体がありますから、そうした立法活動をしている団体もあるかもしれない。消費者契約法で団体訴権を考えるときには、あくまで自然人である潜在的消費者の代わりの団体ですが、自然そのものの代わりの団体となると、ご指摘の通り、もうワンステップ、法の組み立て方が違ってきます。そんな団体の代理権を容認する国民的合意ができるのか、これは政治の問題でもあるような気がします。
投稿: satosho | 2007/05/20 22:14
沖縄のジュゴン訴訟などもありますね。この話題、私も「民法総則」の講義を担当すると、必ず「法主体」のところで取り上げます。これらの訴訟は目的が「世間へのアピール」にもあり、その限りでは話題になるだけでも目的の一部は果たされているのでしょうね。理論的には、真の当事者である「自然物」に当事者能力を認めるのは無理ですから、結局は、当事者能力のない原告の法定代理が成立するか、仮に成立するとして、誰に代理人としての資格があるのか、という話になりますね。団体訴訟の議論などにも絡む、面白い話です。
「法主体」という点でも・・・ディズニーの「おしゃれキャット」というアニメでは、老婦人が莫大な財産を愛猫に遺贈(!)したいと考え、弁護士に手続をとらせます。こういうこと、考える人も少なくないでしょうから、そういう観点からも、考えなければならない話だろうと思います。
投稿: MOMO | 2007/05/20 12:43