« 新司法試験の合格発表 | トップページ | 光市弁護団の事件続報 »

2007/09/16

信託業法の改正3

 信託業法改正のメモの続きです。以前の書き込みはこちらです。

信託業法の改正1

信託業法の改正2


日弁連は、信託業法の改正問題には特別チームを作って熱心に取り組んでいるようです。まず昨年2006年11月20日に意見書を公表しています。下記のサイトでその意見書を見ることができます。

法律業務に伴う弁護士による信託の引受けを信託業法の適用除外とする法整備案について(意見書)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/061120.html

  この意見書は、民事信託、とりわけ高齢者・障害者関係者の利用を念頭に置いた「福祉信託」を弁護士が担うことが社会的に要請されていると指摘し、加えて弁 護士には弁護士法による規制のほか自立的な職務基本規定を定めて懲戒という制裁でその活動の適正が担保されているので、弁護士に民事信託を開放しても心配 はないという論調で次の提案を行っていました。この意見書の背後には、そもそも民事信託は、業法規制の対象外であるという基本認識があるようです。。

2006年11月のこの意見書における日弁連の結論的な提案

1 信託業法2 条の見直し
現行信託業法は、「信託業とは信託の引受けを行う営業をいう。」(2 条)と規定し、例外を設けていない。しかるに、今般の信託法の全面改正に伴い、信託宣言など新たな信託類型への信託業規制の範囲など、信託業の適用範囲についても検討がなされているところである。
そこで、信託業法2 条を見直し、法律事務に伴う弁護士による信託の引受けが例外になる旨を法令上明記する旨を要望する。
2 具体的な立法方法
例えば、以下のとおり信託業法を改正する方法が考えられる。
信託業法2 条「信託業とは、弁護士法(昭和二十四年六月十日法律第二百五号)第三条第一項に基づく法律事務に伴い弁護士が信託の引受けを行う場合を除くほか、信託の引受けを行う営業をいう。」


 この日弁連意見を当然に踏まえているとは思いますが、先に紹介した改正信託業法および改正施行令などが公表され、この7月には制定・公布され、9月30日の施行をまっているわけです。制定・公布の前の、2007年5月2日に日弁連は、再度、意見書を公表しています。
 これも下記のサイトでみることができます。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/070502.html

「本 条(施行令1条の2のことを指す:satosho)は、一方において、信託業の適用除外となる行為の主体について、「委任契約における受任者」ないし「請 負契約における請負人」を無限定に対象としている点において広きに失し、他方において、信託業の適用除外となる行為を「委任事務に必要な費用に充てる目的 で委任者から金銭の預託を受ける行為」ないし「仕事に必要な費用に充てる目的で注文者から金銭の預託を受ける行為」に限定している点において狭きに失して いるものと考える。」

同意見書は、冒頭意見につづいて弁護士業務を次のようにまとめています。

2 弁護士業務に伴う金銭等の預託行為について
弁護士は、依頼を受けた法律業務を処理するにあたり、依頼者のために金銭その他の財産を預かったり、依頼者のために預かった金銭その他の財産を管理・処分 することを日常的に行っているが、こうした弁護士業務としての財産の管理・処分は、その実質において「信託」たる性質を有しているといえる。

たとえば、として次の業務を上げています。
(1)法律事務の処理に要する実費を預かること、
(2)依頼者が事件の相手方に支払うべき金銭または引渡すべき財産を管理・処分すること、
(3)事件の相手方が依頼者に支払う金銭または引渡す財産を代理受領して管理すること、
(4)私的整理事件において債務の弁済に充てるべき依頼者の金銭その他の財産を管理・分配すること、
(5)財産管理の依頼に基づいて依頼者の財産を管理・処分することなど、

弁 護士は、様々な場面において、依頼者である委託者・受益者のための法律事務の一環として、受託者として信託の引受けを、従来より日常的に反復継続して行っ てきた。 また、高齢化社会において弁護士が高齢者等の財産管理や財産承継を目的とする民事信託を法律事務の一環として取り扱うことは、まさしく福祉信託に対する社 会的要求に適切に対応するものとして、きわめて重要である。

 そしてこのように位置づけた弁護士業務は、「弁護士業務の本質に鑑み、そも そも信託業法にいう「営業」ではなく、「信託業」には該当しない」と位置づけています。加えて取引の公正と受益者保護の観点から、弁護士業務を信託業法規 制からはずすことへの懸念を考慮して、弁護士は、弁護士法や職務基本規定によって、その活動が規律されていることを踏まえ、次のように述べる。

 「弁護士自治の下に、このような厳格な制裁措置を伴う懲戒制度によって規制されている弁護士の業務は、行政官庁の懲戒権に服している他の士業とは比較にならないほど自律的に規制されているものと言える。
 中略
<したがって>、弁護士又は弁護士法人がその行う弁護士業務に伴い金銭の預託を受ける行為を、他の委任業務に伴い金銭の預託を受ける行為と全く同列に取り 扱うことは、以上のような弁護士業務の本質とこれに対する厳格な規制の存在に照らし、きわめて不当である。<中略> 弁護士業務に伴い金銭の預託を受ける 行為については、本条のように、信託業法第2条第1項にいう「信託の引受け」に該当しないと整理するのではなく、端的に「信託業」の適用除外である旨を法 令上明文化すべきである」


上記の論理から、①一方で弁護士活動としての信託は「営業信託」ではないと位置づけ、業法規制からはずすことが主張され、②同時に弁護士以外の受任者が、その受任案件に伴う信託を行うことには慎重(否定的)な主張がなされているわけです。②は次の文章になります。

 3 適用除外となる行為の主体について
 したがって、信託業の適用除外となる「委任契約における受任者」及び「請負契約における請負人」は、法令上又は法令に基づく規約上、業務の適正を確保す るための行為規制に服し、かつ、当該法令上又は法令に基づく規約上、分別管理義務等につき信託業法の適用を受ける信託受託者の義務と同等またはそれ以上の 義務を課される地位にある者に限定すべきものと考える。


 そして、この意見につづいて日弁連は、業法改正案に次の提案を行っています。すなわち施行令1条の2が、「委任事務に必要な費用に充てる目的で委任者から金銭の預託を受ける行為」ないし「仕事に必要な費用に充てる目的で注文者から金 銭の預託を受ける行為」について信託業の適用除外としているところを、「狭い」と指摘し(訴状添付印紙などの預かり金に限定するというのであれば確かに狭いで しょう)、また金銭以外の不動産などの信託も含めなければ、およそ福祉信託のニーズに合わないと主張します(これもそうでしょう)。そこで、次の2点の改正を現行案にかさねて要 求しています。

 このような懸念を払拭するためには、「必要な費用に充てる目的」とあるのを、「必要な支出に充てる目的」と改めるべきである。
 様々な類型の信託引受けに対応し得る規律とするためには、「金銭の預託を受ける行為」とあるのを、「金銭その他の財産の預託を受ける行為」と改めるべきである。


  この最期の2点の改正提案は、民事信託を広く活性化させるという点からすれば、ごく自然で当然の提案のように思えます。とくに個人の居住用不動産などの比 較的小額の不動産について、その取扱に熱心ではないといわれる既存の信託業界は、企業努力の欠如を指摘されたもやむを得ないでしょう。弁護士会が民事信託 に着目し、その活性化のために業法規制の緩和を主張していることは、支持されてしかるべきだと考えます。
 しかし、同時に、弁護士会のこの意見は、信託業界と弁護士会の間の職域争いの様相がミエミエですから、この点もすこし見ておく必要がありそうです。実は、そこのところが、この記事をアップし始めた動機でした。(続く)

|

« 新司法試験の合格発表 | トップページ | 光市弁護団の事件続報 »

法と弁護士」カテゴリの記事

障害者後見」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73618/16390846

この記事へのトラックバック一覧です: 信託業法の改正3:

« 新司法試験の合格発表 | トップページ | 光市弁護団の事件続報 »