「医療崩壊と司法の論理」
しかし、昨日のテーマは「医療崩壊と司法の論理」 。
なんでも医療関係者の間では、医学的にはありえない事実認定が行われている
「とんでも判決」というのがいくつか話題になっているようであり、しかも医療崩壊はそうした司法の医療に対する無知・無理解に起因するものであるという論調が、医療者の間にあるそうなのである。とりあえず、なぜそうしたおかしな判決がでるのか、オマエはどう思うのか意見を述べよ、というカタチのシンポのである。しかも与えられたテーマはずばり事実認定。大学で民事訴訟法を教えている人間としては、
第三者的な発言は許されない。ひどく緊張しかつ疲れる一日であった。もっとも、内容的には、すごく刺激的であり、私の日ごろのスタンスを確認することがで
きてよかった。ちなみにこのシンポの参加者は、医療コンフリクト・マネジメント研究会のメンバーが主である。
民訴判例百選に掲載されている心臓脚気事件を素材にして、日本の民事裁判における事実認定の現実をお伝えした上で、「とんでも判決」というのは、なるほど事実認定に問題を含むものかもしれないが、法律学の分野の目からみたらありうる判決ですよ、とお医者さんたちの前
で述べたのであるから、みなさんがっかりなさったのではないかと思う。でも現実である。裁判というものにあまり過剰な期待をしないほうがよいし、悲観する
こともない。裁判であれADRであれ、このような企画の会合に参加する人たちがいる限り、じっくりゆっくり人間らしさを求めていくことができるのですよ、
と述べたつもりであったが、充分に伝わらなかったかもしれない。
それにしても医療現場で患者さんと苦しみをともにしている最前線のお医者さんや看護師さんのセンスは素晴らしい。ありきたりの契約論や法律論などは乗り越えている。裁判所がなんといおうと、弁護士がなにをいおうと、自分たちの頭で考え、自分たちの責任を自覚し、人の責任にしない。そしてなによりも人を見る目が違う。ケアの精神に満ち溢れている。何人かのそうした医療者と、ともに過ごせる時間を幸せと感じた一日であった。
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