仁義も倫理もない事務所(視聴後)
前の書き込みの続きである。実際に番組を見てみた。意図的に倫理違反の設定をしてたのは驚いた。難しい話がいろいろ出てきて、いい教材(反面的な意味で)になりそうだ。以下は見てない人にはわからないかもしれないけど、お時間があればどうぞ、読んでやってください。
稲垣吾郎弁護士(劇中では佐々木法輪弁護士)、と小雪弁護士(劇中では佐々木律子弁護士)の二人がほぼ同時にある不動産
会社の社長夫婦から離婚相談を受ける。双方とも一旦は引き受けるが、訴状が夫側から妻側へ届いた段階で、両方の相談を佐々木事務所の二人の弁護士が受けて
いたことが判明する、という出だしである。
脚本を書いた人が、どの程度、法律家に取材して書いているのか分からないし、どの程度、まじめに(つまりリアルな話として)設定しようとしているのか分からない。
おとなりの「行列のできる」は、あくまで島田伸介のトークショーのお茶休み程度の話として法律クイズを入れているので法律的な話は一種のジョーダンだということが分かるが、こちらの「仁義なき」はそこのところが分かりにくい。
まあ、それはそれとしてマジメな法曹倫理として受け止めると、今日の番組は、4点ほど、へえーーー、本気なのかアと思うような話があった。
まず第1に、両方から相談を受けていたことが分かった段階で、一方が受任しないことで利益相反が回避できるとドラマでは設定されている。ジャンケンして吾郎が負けて、小雪が受任を継続し、吾郎は妻側の事件を受任しない、これで事なきをえるというストーリーである。
でもねえ、「おいおい、そりゃ無理でしょう」ということになる。すでに吾郎弁護士は受任を前提として妻側から相談を受けているのである。この場合、教科書的には、吾郎も小雪も、事件の受任ができないことになる。一方が辞任すればそれで済むということにならない。
次に第2点。離婚が成立したあと、離婚条件の中で夫側に残ると離婚協議の内容になっていた不動産が、離婚成立のずいぶん前に、妻側に名義変更されていることを小
雪弁護士が見落としていること。離婚協議を行うときに関係不動産の登記簿謄本ぐらい取せよせて確認しておいてよ、ということになる。クライエントが調査は
いらないといったからだと、なぜか吾郎弁護士が強弁していたが、離婚協議書を作るにあたってその点のの確認は必須だろうし、妻側についていた吾郎弁護士に
代った別の弁護士も確認する必要がある。そんな協議書を作ったら、一種の詐欺に加担したようなものだ。
小雪弁護士が、ドラマの最期に、自分のクライエント(泉谷しげる演ずる夫)の愛人の素行調査の資料(別の男性と抱き合っている写真)を、相手側の妻に渡している設定は、もうどうしようもない。これ守秘義務違反だろう。
というわけで、このドラマの小雪さん演じる律子弁護士は、懲戒申立がでたら懲戒は免れない。戒告ではすまないような気がするが、その程度かもしれない。
しかしドラマはドラマである。そんなウルサイことを考えていたら脚本なんか書けないし、誰も見ない、ということになろう。そうかもしれない。ならいっそ
のこと、もう少しドタバタ度を上げてみてはどうだろう。となりの「行例」の方が、ドタバタ度は高いように思う。もっともこれは趣味の問題か。
あ、論点は4点あると書いたけど、まだ3点だ。あと一点はなにか。佐々木事務所ができるきっかけの話の中で、大手法律事務所(アソシエイトである吾郎の年収が3000万円らしい、
すごーーい、どこなんだろう)を法輪弁護士がやめるのは、そこの事務所にいると事務所の顧問先を訴えるクライエントの相談を受けられないから、という設定
がでてきた。顧問先を訴えたいと事務所の同僚弁護士(草薙剛)に相談したら、「訴ったえたきゃ、辞めてからやれ、迷惑だ」と明言されるシーンがでた。剛く
んカッコいいねえ。とまあそれはともかく、「辞めてからやれ」っていってもねえ。大手事務所を辞めても、その訴の受任はできないんじゃないのおお、てこ
と。これも職務基本規定の57条の規定(とくに括弧書きの中で明記している)からくる。
大手企業に関わる弁護士は多い。しかもその大手企業に大手事務所が関わった場合、いっぺんに何百という数の弁護士が、その大手企業を相手にする法律相談 や事件受任ができない。法律家の数が少ないと利益相反が増えそうだ。しかし数が増えても、結局、リーガルアクセスは低所得者層のところには広がらない。こ
れは、法曹人口の多い少ないとは別の次元の問題であるように思う。あ、最期はすごいマジメな話になった。
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