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2008/05/30

「だから」と「なのに」 裁判官の不祥事1

 宇都宮地裁の現職裁判官が、ストーカー容疑で逮捕されたニュースが飛び交っていた。報道は少し落ち着いたようであるが、この事件を素材に少しあれこれ書いてみた。数回の連載になる(予定です)。

 

 相手は裁判所職員だということであるから、オフィス内のトラブルということになる。この種のオフィストラブルは、そう珍し いことではないのだろうが、今回のことがニュースになるのは、裁判所という一般の人々があまり知らない職場で、かつ裁判官にあってはならないと世間が思っ ている行動を現職裁判官がしてしまったことへの非難と驚きが社会にあるからだろう。裁判所「なのに」、裁判官「なのに」である。

 比較のたとえとしては適切ではないかもしれないが、障害のある方が、なにか不祥事を起こしたり社会的トラブルに巻き込まれると、すぐさま障害者「だか ら」と表現されることが多い(ように思う)。そして障害のある方の日常生活は、あまり知られていないので(この点では裁判所の中の日常生活と同じ)、重大 な結果(たとえば入所施設での死亡や放火)を引き起こした場合、障害のない方々にとっての意外性が表面にでてきて、「やっぱり」入所施設だからだとか、「やっぱ り」障害者だからと(実は、それほど根拠はないのであるが)納得する(人が多いように思う)。
 障害のある人の場合、ニュースになる事例の中で「なのに」で表現されることは、「結婚した」、「コンサートを開いた」、「一般企業に勤めている」、「マラソ ン大会で完走した」などなど、互いにうれしい話題のおりに、障害のある人「なのに」と表現されることが多いように思う。その根底には、障害のある方の生活 に対する、障害のない方々のある種の先入観があるように思う。

 どちらにしても人々の目に「意外」に映るだろうとマスコミが判断するできごとがニュースになるわけで、「あたりまえ」ではニュースにならない。今回のことが裁判 所の中で「あたりまえ」に生じていることなのか、そうではないのか、実際のところはわからない。しかし、ニュースになるということは、マスコミが、この出来事を裁判所の中であたりまえの出来事だと考えていないということ意味している。「裁判所なのに」であり「裁判官なの に」とマスコミと世間が驚いたことでニュースになったと考えてまず間違いない。

 「だから」と「なのに」の事件では、意外性では共通するものの、その後始末では「だから」の方が難しい(ように思う)。なにせ、人々は妙に「だから」で 納得する傾向がある。「そうではない、これは障害とは無関係なのだ」と説明するのは大変である。しかも、障害があることが、その人の日常生活環境に当然の ように反映しているので、障害のある方の「日常」の違いも説明する必要がある。日常は違うのだと説明すると、もともと「だから」レッテルを貼っている人の 目には「ほらみろ」やっぱり障害者「だから」だろうと簡単に反応される。日常生活社会の構造の違いを説明することがとても難しいのである。

 「なのに」の事件では生活社会の違いは説明の必要がない。裁判官だからストーカーメールを送ったとは誰も考えないからである。むしろ難しいのは、身の処 し方である。事実を否定し徹底的に争うか、あるいは事情を説明し弁明するか、さっさと反省し謝罪するか。どうも最期の方法がこの国では好まれるように見え る。徹底的に無罪主張する植草元教授などは、どうにも評判が悪い。そもそも刑事手続きで否認を貫く被告人に反省の色が見えないと評価するのは、世間でもよく あるが、裁判官もそうである。今回の裁判官も、職務の上ではそうした評価を他人(被告人)にしてきたと推測できる。

 しかし映画「それでも僕やっていない」が、最近では大評判になるわけであるから、手続の中で無実を主張するこが、身の処し方としてまったく世間の支持を受 けないというものでもあるまい。このストーカーメール裁判官さん、どうされるのだろう。報道されるところによれば、事件を警察が相談する前後から相当に興 味ある対応を、この裁判官さんはしているようである。送ったメールはメールとして、問題が発覚しかける前後からあとの事後処理をこの裁判官がどうしていた のか、こちらの方が私には(世間もそのようであるが)興味を引く。裁判官は事後処理の専門家と見られているからである。

 徹底的に無実主張をすることで世間の評価が高まるのか、さっさと謝罪することで世間の評価が高まるのか、この裁判官さんには申し訳ないが、この国の世間の見方は、いまのところどうなのかよく分からない。

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