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2013年5月

2013/05/11

成年後見選挙権回復訴訟の動き

 成年後見選挙権回復訴訟、東京地裁3月14日判決は商業判例雑誌類には掲載されているようですが、最高裁の裁判例サイトにはまだ掲載されていません。ずっと掲載されないのかもしれませんね。
 インターネット上では、島根県のはまだ総合法律事務所のサイトに全文が掲載されていました。
 この訴訟、いまの政治的動きからすると、東京地裁の判決が唯一の判決となる可能性がでてきました。昨日の記事です。

日経新聞
与野党10党は10日、成年後見人が付いた人は選挙権を失うとした公職選挙法の規定を削除し、被後見人に選挙権を与える同法改正案について大筋合意した。自民、公明両党が提案し、野党8党が受け入れた。与党は夏の参院選からの適用をにらみ来週中の法案提出をめざしており、今国会で法案が成立する公算が大きくなった。
 民主党や日本維新の会、みんなの党などが参加した。各党の党内手続きを経て14日に正式合意する見通し。公明党の北側一雄副代表は会合後、記者団に「特に異論もなかったので14日の段階で与野党間で合意し、来週にでも法案を提出したい。(野党と合意した上で)委員長提案でできればいい」と語った。


 現在、訴訟は、東京、埼玉、札幌、京都と4箇所で提起されていますが、判決がでたのは東京地裁だけで、こちらは国側が控訴しています。埼玉は今月の22日に裁判があり結審するかもしれませんが、それでも判決は早くて7月でしょう。

 となると、国会の改正がその前に行われる公算が大ですから、改正が成立すれば既存訴訟はどうなるか。東京訴訟は、控訴をしているものの控訴理由提出期限が5月16日のはずですので、国会の改正前に国側は現行公職選挙法が合憲であり、成年被後見人から選挙権を剥奪することに合理性があると主張してくる可能性があります(あくまで推測です)。しかしその数日前の14日には国会の与野党合意が成立し、法案が上程され、控訴審第一回予定期日の6月24日の前には成立しているでしょう。となると国のこの控訴理由の主張は、担当検事には申し訳ないけど失笑ものの主張になります。どうするんだろう。来週中には今後の動向がはっきりすると思います。

 公職選挙法の改正が成立すれば、各訴訟の目的は達成されており、東京を除く他の訴訟は国賠部分を別にして、通説的には訴えの利益を失うことになります。そのままいくと却下になりますから、少なくとも確認訴訟部分は訴えの取下げということになりましょうか。

 東京訴訟は国賠を併合していません。そこで単純に訴えの取下げという処理もありえますが、国が控訴を取下げて一審判決を確定させるという方法もあるように思います。もっとも立法の結果、国に控訴の利益がなくなるかというと、現状の民訴の世界で通用している控訴の利益の考え方からすれば、控訴の利益がなくなるわけではない、ということになるかもしれません。その場合は、控訴を維持しつつ判決までいって本体の訴え却下になることになります。しかし、ほんとに控訴の利益があるのかなあ。公職選挙法が改正されたあとも「旧」公職選挙法が合憲だと主張し続けることに、どういう手続き的利益があるのでしょう。そう考えると、国側の控訴の利益がなくなって控訴却下もありうるのかなあ、どちらにしてもこれは訴訟法的な後始末の問題であって、実質は変わりません。

 なお、本日、与党が野党に示した改正案は下記です。

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2013/05/04

平成24年度成年後見最高裁概況

(FB に書いた記事ですが、必要な訂正ができないので、こちらにアップです。久しぶりのブログです)
 最高裁家庭局から平成24年度の成年後見制度の概況が作成されています。HPにも掲載されるようです。なお、最高裁の概況をアップしておきます。

最高裁のHPにも掲載されたましたので、下記にリンクを貼り付けます。(13/05/22 Wed)

 全体の申立件数は相変わらず右肩あがりです。任意後見監督人選任事件も含めた申立総数は、34,689件となっており前年度比10.5%の増だそうです。
 内訳的には保佐と補助が伸び率が後見類型よりも若干高くなっております。
 裁判所の人的対応能力をはるかに超える利用があるのに、毎年のように利用が伸び続けるのは、本来 Last Resort であるべき成年後見制度が、日本ではまだまだ Best Resort であると理解する人たちが多いからでしょうか。ほかの支援手段が開発されていないためかもしれません。
 原子力エネルギーしかないと政策決定した以上は、代替エネルギーの開発を大災害が生じるまで否定しつづけた日本社会らしい対応です。
 審理期間は2ヶ月以内で終結する案件が80%ぐらいであり、短縮傾向が続いています。加えて鑑定実施率は10、7%で、こちらも年々使われなくなっています。もう鑑定は現場的には例外になっています。
 弁護士の選任率が前年度比40%アップ、司法書士の選任率が前年度比30%アップしています。相対的に司法職の関与が高くなっています。加えて、親族後見人と第三者後見人の比率が初めて逆転しました。親族後見人が半数以下になったのです。後見人選任動向に変化があったとみてよいでしょう。
 法人後見の数字が877件となっています。これは平成22年度の961件より少なくなっています。但し平成22年度の統計の取り方は、法人はすべて法人にまとめているのですが、翌23年からは統計上、弁護士法人や司法書士法人を法人後見から外しています。加えて社会福祉協議会という法人類型も別に建てられていますので、平成23年の法人後見は780件となっていますが、これら法人を加えれば1200件を超えていたのではないかと思われます。この平成23年の数字に比べても、平成24年度は増えていますから法人後見も増えているとみてよいでしょう。
 ちなみに平成23年の統計から市民後見人という類型が登場し92件と計上されていますが平成24年度は131件と伸びています。もっとも、ここにいう市民後見人なるものがなにを意味しているのかまったく不明ですので、実体を推測することができません。また平成24年度における法律専門職の大幅な選任率の上昇は、どのような要因によるものなのか。まだわかりません。平成23年から平成24年にかけて後見人選任の動向が動いているとみることができます。その動きが何かは、ちょっといまは分析不足です。
 市区町村長申立は4,543件(全体の約13.2%)で,前年の3,680件(全体の約11.7%)に比べ,対前年比約23.5%の増加となっています。全国的にみて、人口比で岡山県が市町村申立が多いことがわかります。
 成年後見制度の既存利用者総数が平成22年度から統計がとられているそうですが、今回概況では166,289人となっています。もっとも平成22年概況や23年概況には数字が見当たりませんでした。平成23年に最高裁が後述の後見支援信託を導入するさいに専門職団体に示したメモには平成22年末で後見類型だけで12万7000件とありますから、2年間で3万件から4万件増えているのではないでしょうか。
 後見支援信託は平成24年2月1日から開始されていますが、その利用数は平成24年12月末までの段階で98人となっています。不動産を保有しない方で、資産3000万円以上の方、かつ家族後見人の新規選任事件について実施しているという噂を聞いたことがありますが、統計上は2000万以下の方もおられるようですから、地方によって運用基準が違うのかもしれません。Facebookにこの記事を書いたところコメントで東京家裁が運用を1000万以上に緩和しているとの情報も頂戴しています。最高裁は最近、新規選任案件だけでなく既存取り扱い案件についても対象を拡大する意向を示していますが、まだまだ試行段階であり各地の弁護士会では反対意見が多いようです。私もこの仕組は財産保全だけを狙ったところがあってご本人の生活支援の仕組みとして疑問がありますので反対です。

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