« 2013年5月 | トップページ | 2014年1月 »

2013年9月

2013/09/08

市民後見人をどう育てるか

下記の文章は、「市民後見人要請の課題」と題して発達障害者白書2014年度版115p(明石書店・2013)に掲載されたもののオリジナル原稿です。スペースの関係があるので、実際に掲載されたものは短くなっておりますが、内容はほとんど同じです。昨日、今日とPACGの後見人養成講座が開かれたのですが、あまり寄与していないのでお詫びの意味もかねてアップします。

 後見人に親族が選任された場合を親族後見人、親族以外の人が選任された場合を第三者後見人と呼ぶ。後者のうち専門職が選任された場合を専門職後見人と呼び、専門職以外の一般市民から選任された場合を市民後見人と呼んでいる。これらの呼称は法律上の概念ではなく社会慣行として観念されているものである。
 成年後見人の選任にあたっては、法制度上とくに明確な資格が要求されているわけではないし、成年後見に特化した専門資格があるわけでもない。従って親族が就任することもできるわけであるし、専門職が就任する場合であっても弁護士、司法書士、社会福祉士など成年後見とは別異な専門資格を持っている人々を流用して選任しているに過ぎない。
 しかし親族後見人も専門職後見人もその外縁を定義しようとすれば可能であるのに対し、市民後見人の場合、市民とはどのような人を指すのか、どのような人が後見人になれるのか、その定義は困難であり外縁は現状では不明確である。それゆえ統計上は扱いにくい側面があり、事実、最高裁はつい最近にいたるまで各年度統計にあたって市民後見人の項目を設定していなかった。たとえば平成22年度統計には知人という項目があったが平成23年度にこれが消え、かわって市民後見人、その他個人の項目が統計上現れたほか、専門職の区分けも細かくなった。しかしその平成23年以降においても、どのようなものを市民後見人としてカウントしているのか、その定義は明らかにされていない。

 市民後見人への期待なるものが社会的に語られてくる背景には、1)親族や専門職だけでは数が少ないと意識されることがあること、2)ご本人の生活状態が安定してはいるが財産が少ないため後見報酬が望めない人には専門職後見人の就任が期待できないこと、などが挙げられよう。3)成年後見の利用の拡大がノーマライゼーションの掛け声のもと、ことさらに強調される社会的風潮も、それを後押ししている。

 厚労省も老人福祉法を改正して市民後見人養成事業を推進しており全国各地でモデル事業が進行している。また東京都のいくつかの区社協が展開した社会貢献型市民後見人モデルや大阪市後見支援センターの市民後見モデルは、それぞれ先駆的なものと位置づけられている。家庭裁判所は、いまのところ市民後見人の単独選任には慎重な姿勢を示しており、社会貢献型市民後見人も養成した社協が後見監督人に同時に就任することを前提にしているし、大阪の例も養成団体と家裁との密接な協議のもと、センターへの登録をはじめとして養成機関の事実上の監督のもとに選任を行っている。

 市民後見人選任についての家裁の慎重な姿勢は、我が国の成年後見制度が、諸外国の制度に比べて一昔前の代行決定の要素を強く残しており、くわえて選任された後見人を支援・監督する公的な基盤が充分でない現状を考慮した場合、合理的な理由があると考えてよいであろう。

 問題は、市民後見人を支える基盤が脆弱であり、後見人の安易な選任は、選任された市民後見人とって負担と困難を生じさせること、そしてなによりもご本人にとっても権利侵害的な後見支援となる可能性をはらむ可能性が制度上あることを、十分に知らせないまま養成運動が進みつつあることである。

 我が国の成年後見制度は、代行決定の仕組みの中で自己決定支援を行うことを後見人等に要請している。これは大変に難しい制度であること、結果的にご本人の生活に重大な結果をもたらすことがあること、後見人の監督責任など法的責任もあることなどを明確に伝えることが今後は重要であり、加えて法人後見の事務執行者など十分な支援と監督のもとに活躍の場を見出すことが適切であろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年5月 | トップページ | 2014年1月 »