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2023年11月

2023/11/10

山口県立大学特別講義

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11月7日火曜日に山口県立大学で特別講義をさせていただきました。演題は、「虐待対応と意思決定支援」

まるで退官記念講義のような感じでお花をかざっていただき、学生だけでなく多くの先生や現場の実践者の方々にご参加いただきました。145名ほどの方がお集まりになったそうです。勢いあまって話過ぎてご質問の時間をとることができませんでした。能力存在推定の話だとか、津久井やまゆりの話、そして津久井から他へ移動してとても人間らしい生活をしているかたの映像、はてはLady GagaとTony Benett のDuetのJazzまで流すという構成でみなさん驚かれたのではないかと思います。なにかの参考になれば望外の喜びですし、楽しんでいただけたとすれば幸いです。
お世話になりました勝井陽子先生はじめ県立大学社会福祉学部のみなさまに御礼申し上げます。
「能力存在推定」の考え方は、日本国内ではほとんど主張されませんが、どんなに重い認知症の方であっても、どんなに重度の知的障害の方であっても、その人なりの人生と思いと考えがあると「推定せよ」という考え方です。世界的にはこれが標準だと思っていますし、国連の障害者権利条約は確実にこの考え方で運用されています。そもそもこの考え方に立たないと「意思決定支援」なんてありえないです。しかし、能力存在推定の考え方にたったときに国連のいうように代行決定を100%なくすことができるのか、それともなんらかの場合に代行決定は残るのか、世界的に議論されているところだと思いますが、これも整理させていただきました。私は、代行決定は残るが、それは「ご本人の能力」の問題ではなくて「支援者の能力」(つまり意思をくみ取る能力)の問題であると整理しております。まあ、こんなことを言っているのは日本国内では私ぐらいでしょうね(苦笑)

 

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2023/11/04

法律事務所という場所

 いまは昔、私が大学院の学生だった頃の話しである。尊敬する弁護士の方の事務所を見たくてひとりでぶらりとお邪魔した。
 その事務所は東京駅から1時間くらい電車を使った地方都市にある。いかにも地方中核都市といった趣の駅前から10分ほど歩いた商店街を突き進むと辿り着く、はずだった。
 今は珍しいアーケード商店街になっているそこは、両側に小さな店が建ち並び、結構な数の買い物客が歩いている。ところが全長1キロほどの小さな商店街の中を行きつ戻りつしても事務所の看板が見当たらない。ビルの三階だと聞いてはいたが、アーケードのために上は見えない。やむなく電話を入れて事務員の方に場所を聞いて見た。実際にはほぼ近くにいた。一階が小さなスーパーになっていて脇の階段から上に上がる。二階は喫茶店。三階が事務所だった。一階の入り口そばに申し訳程度のプレート表示があった。事務所に入るとその先生が笑顔で出迎えてくれた。
「先生、今日は」
「いやあ遠いところをようこそ、よくきたね。。すぐわかった?」
「ええ、なんとか。でもなかなか入り口を見つけるのに苦労しました」
「初めての人は、そうかもしれないね。」
「どうしてこんなに分かりにくいところに事務所を構えているのですか? 派手に宣伝した方が良いとは言いませんが、依頼者の方が迷いませんか」
「君は、法律事務所というものを知らないね。依頼者が迷うかどうかが問題なのではなくて、依頼者が入りやすいかどうかが、法律事務所にとっては一番、重要なことなんだよ」
「はあ、そうなんですか?」
「この事務所は、一階から上に行くときに、喫茶店に入るのか法律事務所に入るのかは分からない。つまり、依頼者が入るときは法律事務所ではなくて、喫茶店にお茶する感じで入ってこれる、これが重用なんだよ」
 なるほどなあと若者の私は思ったものだ。
 インターネットで検索をかけると今でもこの商店街は生きているようだ。でも尊敬する先生は鬼籍に入られた。40年ほど前の思い出だが、貴重な経験だった。
 この弁護士さんの考えからすれば、事務所を派手に写真でサイトに掲げるとか、ホームページで案内するとかは言語道断ということになろう。いま私は事務所を構えている。その時の教えを活かして、どこに行くのかわからないような隠れ家事務所にしている(笑)

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