標記のデータが最高裁から公表されています。
http://www.courts.go.jp/about/siryo/pdf/seinen11.pdf
それによると2010年1月から12月末日までの全国の成年後見の申立件数の概況は次のようです。ほぼ認容されていますので、昨年一年間だけで24000人の方が選挙権を失ったことになります。
○ 成年後見関係事件(後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で30,079件(前年は27,397件)であり,対前年比約9.8%の増加となっている。
○ 後 見 開 始 の 審 判 の 申 立 件 数 は 2 4 , 9 0 5 件 ( 前 年 は 2 2 , 9 8 3件)で,対前年比約8.4%の増加となっている。
○ 保 佐 開 始 の 審 判 の 申 立 件 数 は 3 , 3 7 5 件 ( 前 年 は 2 , 8 3 7 件 )で,対前年比約19.0%の増加となっている。
○ 補助開始の審判の申立件数は1,197件(前年は1,043件)で,対前年比約14.8%の増加となっている。
○ 任 意 後 見 監 督 人 選 任 の 審 判 の 申 立 件 数 は 6 0 2 件 ( 前 年 は 5 3 4 件 )で,対前年比約12.7%の増加となっている。
審理期間は、前年度に引き続きやや短縮傾向があると解説されているが、ほぼ横ばいで、全体の93.3%が4ヶ月以内、75.1%が2ヶ月以内で終結している。
申立人と本人との関係は次の通りで、市町村申立が一割を超えました。
申立人については,本人の子が最も多く全体の約37.1%を占め,次いで本人のその他親族が約14.8%となっている。
○ 市 区 町 村 長 が 申 し 立 て た も の は 3 , 1 0 8 件 ( 全 体 の 約 1 0 . 3 % )で,前年の2,471件(全体の約9.0%)に比べ,対前年比約25.8%の増加となっている。
本人の年齢構成では、60才以上が全体の7割ぐらいであり、50才代以下が3割である。50代の利用が障害者の利用なのかどうなのか、微妙なところがあるが、障害者の成年後見利用は、ほぼ2割から3割と言われていることをデータ的にも裏付けているように思う。
分からないのは、未成年の利用が0.2%存在することです。この統計は認容事例の統計ですので、未成年に対して成年後見の審判が下りた事例が約60件程度あることになるが、どのような事例でなのでしょうか。成年後見関係事件の統計ですから、まさか未成年後見をここに入れているとは思えないのですし、、、。
鑑定については次のようになっている。ついに鑑定実施が2割を切りました。
○ 後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件の終局事件のうち,鑑定を実施したものは,全体の約17.7%(前年は約21.4
%)であった。
○ 鑑定の期間については,1か月以内のものが最も多く全体の約53.8
%(前年は約52.1%)を占めている。
○ 鑑定の費用については,5万円以下のものが全体の約66.9%(前年
は約63.3%)となっており,全体の約98.8%の事件において鑑定費用が10万円以下であった(前年は約98.2%であった 。
後見人の属性については、次のようです。
○ 成 年 後 見 人 等 ( 成 年 後 見 人 , 保 佐 人 及 び 補 助 人 ) と 本 人 の 関 係 を み ると,配偶者,親,子,兄弟姉妹,その他の親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約58.6%(前年は約63.5%)を占めている。
○ 親族以外の第三者が成年後見人等に選任されたものは,全体の約41.
4%(前年は約36.5%)であった。その内訳は,弁護士が2,918件(前年は2,358件 ) で , 対 前 年 比 で 約 2 3 . 7 % の 増 加 , 司 法 書士 が 4 , 4 6 0 件 ( 前 年 は 3 , 5 1 7 件 ) で , 対 前 年 比 で 約 2 6 . 8 % の増 加 , 社 会 福 祉 士が 2 , 5 5 3 件 ( 前 年 は 2 , 0 7 8 件 ) で , 対 前 年比 で 約 2 2 . 9 % の 増 加 と な っ て い る 。 ま た , 法 人 が 成 年後 見 人 等 に 選任 さ れ た も の は 9 6 1 件( 前 年 は 6 8 2 件 ) で , 対 前 年 比 で 約 4 0 . 9%の増加となっている。
法人後見も増えていますね。最高裁のデータからは、明確にはなりませんが、法人後見と後見・保佐・補助の利用割合、市町村申立と後見・保佐・補助の割合を比較すれば、全体の割合より、保佐・補助の利用割合が高いはずです。これは、私のまわりの実感です。
全体の傾向をひと言で言えば、ここ数年の傾向が持続している、といえましょう。総数は緩やかな右肩あがり、審理期間の短縮、鑑定の不実施例の増加、法人後見、市町村申立の増加、第三者後見の割合が増加し(4割強)、親族後見人の割合が減少(6割弱)、とくに法人後見、市町村申立の活用が顕著になってきていること、保佐・補助の利用は増えているが、全体からみればまだ一割を超えたぐらいで、後見類型の利用が圧倒的な数を占めている。全国統計から言えることは、こんなところかと思います。より詳細な利用実態は、別の調査が必要でしょう。