2015/12/18

権利擁護支援と法人後見

●下記の本が出版されています。
全国権利擁護支援ネットワーク編「権利擁護支援と法人後見」ミネルヴァ書房(2015)
手前味噌になりますが、なかなかいい出来に仕上がっています。私も最初の部分を執筆させて頂いております。
Amazonをはじめとする各種インターネット書店で購入できますが、下記の全国権利擁護支援ネットワークのサイトからも購入できます。
(15/12/22 Tue)訂正

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2015/12/15

権利擁護と意思決定支援 第1回アジア学術大会

標記が、下記の要領で開かれました。非常に興味深い内容で日本からも全国権利擁護支援ネットワークを中心に多くの方が参加したのですが、あまり日本国内では知られていません。そこで、報告されたタイトルと報告者だけでも、とりあえず掲げておきます。
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後期高齢社会における高齢者・障がい者のための権利擁護と意思決定支援に向けた第1回アジア学術大会
■日時:2015年12月11日(金)~ 12月12日(土)
■場所:ソウル大学 近代法学教育百周年記念館 チュサンホール(84棟301号)
■出席国:韓国、日本、シンガポール、台湾、香港、中国
■宿舎:ソウル大学 Hoam Faculty House
■企画:韓国研究財団「SSK意思決定能力障害者の社会統合」研究事業団
■主催:法務部、韓国成年後見学会、韓国障害者開発院、ソウル大学校法学研究所、日本全国権利擁護支援ネットワーク(ASNET-Japan)
■後援:大韓弁護士協会、財団法人温律、成年後見支援本部、社会福祉法人ソンミン、韓国障害者福祉学会
第1セッション(午前):アジア各国の成年後見制度
司会:朴ウンス弁護士
(日本)日本の成年後見制度と権利擁護 佐藤 彰一 ASNET−Japan代表 国学院大学教授
(シンガポール)精神能力法(Mental Capacity Act)下での意思決定能力障害者の保護 Daniel KOH 公共後見庁長官
(中国)中国成年後見制度の法的方向 李 霞
 華東政法大学法学院 教授
第1セッション(午後):アジア各国の成年後見制度
(香港)
成年後見制度16年 Charles Chiu
香港成年後見委員会委員長
(台湾)
医療行為についての同意 戴璃如
台北大学法学院 教授
(韓国)
韓国成年後見制度と意思決定支援制度化の模索 朴仁煥
仁荷大学校法学専門大学院敎授
第2セッション 財産管理と意思決定支援(二日目)
(日本)
成年後見人の財産管理の実態 田邊 寿
全国権利擁護支援ネットワーク社会福祉士
(日本)
日本の成年後見制度における成年後見監督の実態とこれからの課題 熊田 均 弁護士
(韓国)
成年後見制度における法的問題 金炯錫
ソウル大法科大学院 教授
(韓国)
専門職後見人と財産管理の争点(1) 金ウンヒョ
大韓民国弁護士会 成年後見委員長
(韓国)
専門職後見人と財産管理の争点(2) 李ナムチョル
   成年後見支援本部 法務士
(日本)生活困窮者支援法施行と権利擁護支援センターの取り組み〜地域福祉の観点から〜 平野 隆之
日本福祉大学教授
二日目第3セッション 障害者の権利擁護
(中国)
中国高齢者成年後見制度の現状と改革 Li Xin
(台湾)
国連障害者権利条約からみた台湾成年後見制度の再検討
黃詩淳  台湾大学法学院教授
(シンガポール)
シンガポール精神能力法における意思無能力者の保護
 Laura Chua (シンガポール後見庁)
(韓国)
韓国障害者権利擁護の実態と改善方案 崔ユンヨン
ペクソク大学社会福祉学部教授
(韓国)
韓国における新しい成年後見制度の意思決定支援活動の概要
 Seok-Won Roh  中央障害児童・発達障害者支援センター
Discussion   Joung Youl Kim
       Nam-Young Song
第4セッション:医療、身上監護
(日本)
胃瘻造設の拒否に関する意思決定支援について
住田 敦子
尾張東部成年後見センター
社会福祉士
(韓国)
精神または知的障害者の病院治療における同意能力 尹ジョンチョル 京畿道老人病院 医学博士
(韓国)
韓国における精神医療療養施設入院(入所)手続きの問題点 権オヨン
精神障害連帯事務総長
(弁護士)
質疑応答(20分) Ho-Kyun Park Sung-Ju Kim
昼食
第5セッション:後見代替制度と意思決定支援
(日本)
日本における日常生活支援事例 今井 友乃
全国権利擁護支援ネットワーク運営委員
(日本)
成年後見制度における身上監護義務と諸制度の導入 高橋 敬幸
権利擁護ネットワークほうき
弁護士
(シンガポール)
特別需要信託の運用状況
Esther Tan
(韓国)
意思決定能力に障害のある人のための信託〜韓国の事例 チョン チャンフン
韓国自閉症友愛協会信託意思決定支援センター・弁護士
質疑応答(30分)
 Su Jim You  OhHyung Kwon
総合討論:座長と各国参加者

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2015/01/26

ジェニー・ハッチ(Jenny Hatch) の物語

2014年の5月29日にアメリカのバージニア州アーリントン市で開かれた成年後見法関係者の第3回世界会議に、一人のダウン症の女性が壇上でスピーチを行い、参加者から万雷の拍手喝采を浴びました。アメリカ法曹協会(日本の日弁連にあたります)の紹介記事では「心が張り裂けるような」話であったと形容しています。この女性の話はなぜ注目されたのか。それは、いま世界で起きている成年後見をめぐるパラダイムシフトを劇的に示しているからです。世界が注目したこの女性の話は、なぜか日本ではほとんど紹介されていませんので、以下で少し詳しく説明ましょう。なお、この文章は、全国手をつなぐ育成会連合会の機関紙「手をつなぐ」2014年11月号に掲載された原稿をブログ用に修正したものです。

 2012年7月8日アメリカのバージニア州にあるニューポートニュースという我々日本人には聞き慣れない都市の裁判所に、ある成年後見申立が提起されました。申立人は母親のJulia Rossさんと義理の父であるRichard Rossさん。ジュリアさんが前の夫との間に生んだ当時29歳になるダウン症で知的障害のある娘さんJenny Hatchさんに成年後見人をつけてほしい、その成年後見人には自分たちを選任してほしいという申立です。

 

1_2(左の女性がJenny です。後ろに映っているのは、務めているリサイクルショップの商品です)

アメリカの成年後見制度は州ごとに違っていて、よくわからないことが多いのですが、この申立では後見人の権限を指定して申し立てています。その内容は、ジェニーの生活全般、とくに誰と住むのか、どんな医療行為を受けるのか、誰がジェニーの世話をするのか、これを決める権限を後見人に与えることが内容になっています。日本の後見類型よりも大幅な権限を求めています。裁判所は、すぐさまジェニーに特別代理人(Guadian AD Litem)を指定し、この特別代理人と母親側の代理人のやりとりの結果、1ヶ月後の8月27日に仮の後見人が選任されます。日本でいうところの審判前の保全処分みたいなものですが、第三者のサービス提供事業者が選任されています。この仮の後見人は、年があけた2013年1月に辞任します。辞任の理由はよくわかりません。代わって仮の後見人に選任されたのが申立人の母親と父親です。ジェニーの生活のすべてのことを決定する権限が与えられたのです。

 ジェニーは2008年4月ごろから市内のリサイクルショップでアルバイトをしていて、近くの家族ぐるみの友人と暮らしていたのですが、自転車事故を起こして病院に入院しました。同じ頃、友人もアパートを失ったため、退院後にどこにも行くところがなくなって、この成年後見申立が提起されるころは、ジェニーはそのリサイクルショップの経営者の自宅で寝泊まりしていました。Jennyの実の父親は、ノースカロライナに再婚して住んでいてJennyと暮らせないとケースワーカーに答えたようですし、母親のジュリアと義理の父であるリチャードはJennyとの関係がうまくないので一緒に暮らせないと答えたようです。Jennyを受け入れた経営者は、Kelly MorrisさんとJim Talbertさんという二人のカップルで、Jimには脳性麻痺のある15歳の娘さんがいて、4人で暮らしていたわけです。母ジュリアは、この事態を非常に心配して、グループホームの調整を行い、いったんジェニーはグループホームに入るのですが、そこでの生活が嫌でまた経営者カップルの自宅に逃げ帰ります。成年後見は、その二日後に申し立てられています。ジェニーはグループホームのどこが嫌だったのか。報道によれば、パソコン使用も携帯電話の使用も禁止され、子供扱いされたことが嫌だったとあります。

1_2

(ちょっと関係がややこしいので、図にまとめておきますね)

 この裁判は、全米の注目をあびました。ワシントン・ポストをはじめ有名新聞が報道し、CBSテレビなども全米に報道しました。ワシントンにいる人権派弁護士が派遣され特別代理人と一緒に弁護活動を行います。まず行ったのは、母親側が行ったジェニーの面会制限の撤回です。仮の後見人に選任されてからジェニーはグループホームを転々とさせられていたのですが、母親側が仮の後見人を交代した後は、母親側の承認がないとジェニーに関係者が会えなくなっていたのです。承認を受けるためには、裁判の話をしてはいけないなど、厳しい制限がついていました。これでは弁護活動ができないわけですから、ジェニーの代理人はこの撤回を裁判所に命じてもらい、裁判所に専門家の鑑定意見をはじめさまざまなソーシャルレポートを提出しました。

 法廷の審理は非公開ですが、ジェニーは明確に「私には後見人はいらない、私のことは私が決める」と述べたそうです。あまりにしつこくジェニーが発言するため裁判官が、いったんジェニーを法廷から排除する命令をだしたこともあるようです。

2013年8月2日、裁判所は決定をくだしました。概要次のような内容です。
1)ジェニーを後見に付す
2)後見人にはリサイクルショップの経営者を選任する。
3)後見の期間は1年で終了する。
4)後見人の権限は限定的なものとする。
5)後見人は、決定にあたってまず意思決定支援の手法をとらなければならない。
6)後見人は、ジェニーの意思に反した決定ができない。

 後見人がついたわけですから、母親側の申立は形式的には受け入れらたわけですが実質的には完敗です。ジェニーは後見人となった経営者カップルと正式に暮らすことができるようになり、後見期間がすぎたいまもそこで暮らしています。

 読者のみなさんはこの事件をどうご覧になりますか。障害者の親御さんは子どものことが心配です。管理の行き届いた施設で安心・安全な生活を送ってほしい。母ジュリアは自分とは一緒に生活できないけど、誰だかわからないリサイクルショップの経営者と一緒に住むのは許せない、そう思ったのでしょう。グループホームの方がジェニーにとってより良い生活を送れる場所である、そう信じていると思います。それが子供のための母親の役割であり権利擁護である、そう思っていたかもしれません。日本で似たようなご相談を母親から受けたことがあり、私もそのように考えて母親の代理活動をしたことがあります。

 しかし、ジュリアは可哀想に、子供の意思を踏みにじる人権侵害者のレッテルを全米で貼られてしまっています。母の思いは、母の思いであって、子供は子供で自分の思いがある。子供の思いを尊重することが後見人の役割であり、そうした役割を担える人物は経営者側だ、そう裁判所が判断したわけです。しかも、非常に変わった後見人の選任形態です。後見人には実質的にはなにも代行決定をする権限が与えられておらず、意思決定支援をすることが求められているのです。意思決定支援とはなにか、代行決定とどう違うのか。これは別に書くことにしましょう。

参考サイト

JennyHatchJusticeProject

Japantimes の記事

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2015/01/22

ロックンロールで福祉をつなぐ

PACガーディアンズでは、2月21日(土)に「ロックンロールで福祉をつなぐ」と題して、以下の通りライブを開催し ます。市川市のレンコンバンドとサルサガムテープ、そしてコミュニティフレンドの明石健太郎さん他、多彩な出演者による楽しい演奏とパフォーマンスの響宴です。

 日時:2015年2月21日(土)受付13:00 開始13:30 終了16:30
 場所:市川グリーンスタジオ(市川市生涯学習センター2階)
 参加費:1,000円(小学生以下のお子さんは500円)

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2015/01/01

謹賀新年 2015

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旧年中は沢山の方々にお世話になりました。
ありがとうございました。
そして本年もよろしくお願い申し上げます。

昨年は、一昨年の暮に発覚した袖ヶ浦の県立障害者施設での虐待事件の検証作業にかなりの時間を取られました。そして多くのことを考えさせられました。この事件の余波は、まだまだ続くでしょう。微力ではありますが、引き続き関わっていきたいと思っています。

大学では、国学院大学での授業を行う傍ら、上智大学大学院で権利擁護に関わる授業を試み、名古屋の日本福祉大学での研究会にも参加しています。福祉系の大学での授業や研究職との交流はとても刺激的です。こちらも引き続き力を入れていきたいと思っています。

昨年、所属弁護士会を千葉弁護士会に移し、事務所も船橋に移転しました。地元でゆったりと仕事をしたいと思ったからです。いまのところ成功だったと思っています。

全国権利擁護支援ネットワークは法人格を取りました。参加団体は100に近づいています。各地でのフォーラムだけでなく、韓国との交流も深めており、暮れにはイギリスと韓国の権利擁護関係者を招いて国際シンポを実施しました。非常に疲れましたが、大きな経験だったと思います。このネットワーク活動もにも引き続き力を入れていきたいと思っています。

そうした中で仕事を整理してきております。
PACガーディアンズ理事長を昨年退任しました。後任には名川勝先生が就任してくださいました。私は顧問として協力していきます。

ADRの委員を2つ辞めました(ひとつは形式的には在職しているのですが、実質的には退職しています)。ADRで残っているのは簡裁の調停委員ですが、これもあと1年の任期で終わる予定です。調停委員の仕事はとても勉強になるので続けたいとは思うのですが、弁護士会を移動しましたので、再任はないでしょう。

あちこち移動が多くなっていますが、昨年は海外に3度行きました。海外と言っても台湾と韓国と近場ばかりですが、すこし前には考えられなかったことです。ことしもまた海外にいくチャンスがありそうな予感がしています。

さて2015年はどんな年になるのでしょうか。私には予想はつきませんが、みなさまと、どこかで繋がりながら、わたしらしく行きていければ思っております。どうか本年もよろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。

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2014/07/12

船橋の話

 7月9日(水)に、船橋市議会の健康福祉委員会に参考人として呼ばれ、船橋市内の成年後見支援センターの活動について意見を求められました。どうして私に声がかかったのか分かりませんが、PACガーディンアンズのこれまでの経験を踏まえて船橋の権利擁護についての意見を述べました。

 もっとも限られた時間でありましたので、簡潔に次の3点を指摘したにとどめています。

1) 成年後見制度は、権利擁護の側面だけでなく権利侵害の側面がある。

2) 権利擁護として利用するためには財産管理・身上監護の両面において、ご本人の意思を尊重すること不可欠であるが、簡単な話ではない。そのため誰が後見人になるのかが非常に重要だし、誰がなったとしても一人では権利擁護支援はできない。それゆえ、しっかりした法人組織のバックアップは不可欠である。

3) 船橋市では、高齢者の成年後見については、2)の問題についてはまったく手が付けられておらず、放置状態である。


 以上の3点を指摘したわけですが、議会の委員会では十分に解説を述べる時間がありませんでしたので。以下補足です。
 
 船橋の異様さは、上記の3に指摘しましたが、高齢分野の権利擁護については、ほとんど手がついていないことです。これは日本の他の地域に比べて著しい特殊性を示していると言ってよいでしょう。なぜ、そんな対応になるのでしょうか。

 高齢分野については包括があるので大丈夫である、との考え方もあるかもしれません。しかし、包括は後見の相談を受けても他に回すことぐらいしかできませんし、高齢者の権利擁護について相談を受けたり法人後見を受任できる適切な機関がないのが船橋です。

 専門職団体を紹介すると言っても、船橋市内の専門職団体と連携が取れているわけではありません。また、いくら法律専門職と言っても、ご本人も地域もよくわからない形で関わっても、適切な支援はできないでしょう。

 後見申立をすれば裁判所が必ず誰かを後見人に選んでくれるから、市で後見の専門組織に対するニーズがない、とする考え方もあるかもしれません。しかし、これはいまの厚労省の考え方にもまったく反していますし、そもそも裁判所にすべてを投げてしまって後はしらぬ顔を決め込むわけで、行政としてはまことに無責任な対応でしかないでしょう。

 以上をまとめて言いますと、高齢者に対する権利擁護支援の現状を見る限り、船橋では安心して歳をとれない、こういう言葉が出てきます。そこまでは、委員会では言いませんでしたが、そうなんですよ船橋のみなさん。

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2014/05/27

平成25年度成年後見関係事件概況

平成25年成年後見関係事件の概況が裁判所HPに掲載されました,

◆成年後見関係事件の概況 平成25年1月~12月

昨年1年間の動向は、成年後見制度が2000年にスタートしてから、もっとも大きな転換があったと思われます。以下、概要を紹介します。

1)申立件数の微減
 これまで申立件数は、ずっと右肩上がりで増え続けておりました。平成19年度が、平成18年度の集団申立の翌年であったため前年度比で大幅に減少していますが、17年、18年、19年と並べてみればやはり右肩上がりの傾向でした。それが今年は止まったのです。
 後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件を合わせたの申立の総数は合計で34,548件(前年は34,689件)であり,対前年比約0.4%の減少となっています。
 内訳では、後見開始の申立件数が28,040件(前年は28,472件)で,対前年比約1.5%の減少。保佐開始の申立件数が4,510件(前年は4,268件)で,対前年比約5.7%の増加。補助開始の申立件数が1,282件(前年は1,264件)で,対前年比約1.4%の増加、任意後見監督人選任の申立件数が716件(前年は685件)で,対前年比約4.5%の増加となっています。後見類型だけが微減で、ほかは微増、とくに保佐が伸びています。これは選挙権裁判の影響も少しはあるのかもしれません。

 申立が減ることは、私はほぼ予測していました。後見支援信託の利用強制を、親族後見の新規申立案件から管理継続案件(つまりすでに後見人になっている事件)にまで拡大したのを受けて、親族が申立をためらう傾向がでているのではないかと推測されるからです。この観点からは、むしろ予想よりも減らなかったなあと思っています。これはまだ拡大が始まって間がないからからしれません。もしそうだとするなら、平成26年度の概況では、さらに申立が減少すると予測されます。


2)高い認容率
 申立に対する認容率は相変わらず高率です。成年後見関係事件の終局事件合計34,105件のうち,認容で終局したものは約94.6%(前年は約91.9%)で前年よりも高くなっています。

3)審理期間はほぼ横ばい
 審理期間は、成年後見関係事件の終局事件合計34,105件のうち,2か月以内に終局したものが全体の約77.8%(前年は約80.5%),4か月以内に終局したものが全体の約94.8%(前年は約95.2%)であり,2ヶ月以内に終了したものが若干減っています。しかし、長期化したというほど長くなったわけではありません。

4)市町村申立の増加
 市町村長の申立がさらに増えました。,5,046件(全体の約14.7%)で,前年の4,543件(全体の約13.2%)に比べ,約11.1%の増加となっています。地区別では、人口比において岡山の申立が多いのが目を引きます。

5)申立動機
 申立ての動機としては,預貯金等の管理・解約が最も多く,次いで,介護保険契約(施設入所等のため)となっており、ほかに保険の受け取り、不動産の処分、訴訟手続、相続手続などがありますが、こういったものについての特別立法が行われれば、成年後見の利用は格段に減るものと思われます。

6)鑑定の実施は微増
 鑑定を実施したものは,全体の約11.6%(前年は約10.7%)、前年度に比べて微増であり、期間については,1か月以内のものが最も多く全体の約56.6%(前年は約55.9%)を占めています。微増とはいえ、原則と例外が逆転している現象は変わりません。
 微増の背景には、東京家裁が虐待事案を原則鑑定(虐待者からの不服申立にたえうるためだそう)にしたことがあるとの指摘があります。

7)親族後見人の減少
 成年後見人等のなり手については、親族の割合がさらに減少しました。全体の約42.2%(前年は約48.5%)となっています。 第三者が成年後見人等に選任されたのは,全体の約57.8%(前年は約51.5%)で,前年よりも割合が増えています。
 その内訳は,弁護士が5,870件(前年は4,613件)で,対前年比で約27.2%の増加,司法書士が7,295件(前年は6,382件)で,対前年比で約14.3%の増加,社会福祉士が3,332件(前年は3,121件)で,対前年比で約6.8%の増加となっています。弁護士の伸びが大きいですね。

8)市民後見人と法人後見
 注目すべきは、市民後見人の定義が初めて入った点でです。「市民後見人とは,弁護士,司法書士,社会福祉士,税理士,行政書士及び精神保健福祉士以外の自然人のうち,本人と親族関係(6親等内の血族,配偶者,3親等内の姻族)及び交友関係がなく,社会貢献のため,地方自治体等が行う後見人養成講座などにより成年後見制度に関する一定の知識や技術・態度を身に付けた上,他人の成年後見人等になることを希望している者を選任した場合をいう」と記載されています。過去の集計は各地区の裁判所から市民後見人として報告されたものをそのまま集計したそうですが、今回からはこの定義にそって集計しているようです。もっともこれは、集計の便宜上の定義であり,市民後見人がこれに限られるとする趣旨ではない、との注がついていますが、一つの見解を示したものと言えます。
 他方で、法人後見の概数がやはりでてきません。社会福祉協議会が560、その他法人が959とありますから、これの合算は1519です。前年度の数字が1,286ですから 、こちらもかなり増えています。市町村申立の増加より高率です。市民後見人より法人後見の方が、実際に担っている役割が大きいと言ってよいでしょう。

9)継続利用件数の総数
 平成25年12月末日時点における,成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計で176,564人(前年は166,289人)となっており,対前年比約6.2%の増加です。
 内訳では、成年後見の利用者数が143,661人(前年は136,484人)であり,対前年比約5.3%の増加。 保佐の利用者数は22,891人(前年は20,429人)であり,対前年比約12.1%の増加、補助の利用者数は8,013人(前年は7,508人)であり,対前年比約6.7%の増加、任意後見の利用者数は1,999人(前年は1,868人)であり,対前年比約7.0%の増加となっています。新規申立が3万件近くあるなかで、継続案件の増加が1万件程度、ということは、2万人近くの方の利用が終了したことを意味しています。

10)後見制度支援信託
後見制度支援信託を利用するために,後見人が代理して信託契約を締結した成年被後見人及び未成年被後見人の数は532人(前年は98人)であり,信託した金銭の平均額は約3,700万円となっています。平均で3700万円ですから、利用した人の下限はもっと少ないことになります。1000万円程度でも利用を薦められることがあると聞いています。なお、532名という数字は対前年比では多いのですが、あちこちで聞く実感よりは少ないと思います。おそらく年が変わった平成26年度はもっと増えていると思われます。また、利用にあったてはまず後見等の監督人が職権で選任され、信託利用ののちに監督人は辞任、信託を利用しない人には、そのまま監督人等が職権が継続する扱いのようですので、後見監督人の選任事件が相当数にあがると思われますが、これがどの程度の数に上がっているのか、今回の概況ではまったく触れられていません。知り合いの弁護士さんや司法書士さんに伺うと、急激に増えていると思われます。

監督人の選任数、それから任意後見契約の登記数、この二つはぜひ概況のなかに入れていただきたいところです。

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2014/05/01

法律事務所移転のお知らせ

2014年5月1日付けで所属弁護士会を第二東京弁護士会から千葉県弁護士会へ移籍し、同時に法律事務所を移転しました。インターネットなどの公式データベース上に反映されるのは少し時間がかかりますので、この場にてお知らせいたします。
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旧事務所
〒101-0032 東京都千代田区岩本町3丁目5番8号岩本町シティプラザビル5階
佐藤彰一法律事務所  弁護士 佐藤彰一
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新事務所 
〒 273-0005
船橋市本町6-3-16レックスマンション601号室
PAC法律事務所 弁護士佐藤彰一
TEL:047-407-4710  FAX:050-3730-7917
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なお、PAC法律事務所のPACは、いくつかの意味がありますが、私・佐藤としては、
Professional Advocacy for citizenes ぐらいの意味を強調したいですね。もっとっも、
PACガーディアンズというNPO法人の活動を理事長として長らく続けておりまして、理事長をこのたび退くことになりますが、これからもこれもPACガーディアンズの活動は弁護士として続けます。そのPACガーディアンズのPACは、Protection and Advocacy  です。日本語でいう権利擁護ですね。
 今後共ひきつづきよろしくお願い申し上げます。

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2014/01/01

謹賀新年

新年、あけましておめでとうございます。

大掃除も年賀もサボって、年末年始、ただボーっとしております。
あれもやりたい、これもやりたい、やらなければならないこともいっぱいある。しかし、結局、なにもやらずにスーパー銭湯に家族とでかけた年末でした。
さて、昨年を個人的に振り返って今年のスタートをしたいと思います。

1)昨年の権利擁護関係でまず特筆すべきは、成年被後見人の選挙権回復でしょうね。
 公職選挙法の選挙権剥奪規定を憲法違反であると判断して成年被後見人に選挙権を認めた3月14日の東京地裁判決に始まる社会的な動きは、私も驚くばかりでした。政治というものの動きも垣間見させていただきました。マスコミの動きや、さまざまな人々の動きをみるにつけ、へええ、と勉強をさせていただきました。民事訴訟法の論点としてもおもしろい論点を含んでいたのでいずれゆっくり振り返りたいと思っていますが、はてさてその時間があるかどうか。
 この出来事は、成年後見に対する社会的な理解を進めたことは確かです。単に選挙権の問題にとどまらず、代行決定である成年後見制度に対する懐疑的な見方が進み、意思決定支援の議論があちこちで見られるようになっています。2014年はさらに進むでしょう。良いことだと思っていますが、意思決定支援に名を借りた代行決定の議論にならないように気をつけたいです。

2)上記とも関係しますが、障害者権利条約が批准されました。その前提として各種国内法令が整備されたのですが、障害者差別解消法の成立や、障害者優先調達推進法や精神保健福祉法の改正が昨年中にあったことは批准の話も含めてあまり報道されていません。まあ、形を作っただけということかもしれませんね。差別解消法、どこまで実効性があるのかまだ不明確ですし、精神保健福祉法の改正については、保護者制度を廃止したのはいいとして実質的には改悪ではないかという議論すらでています。
 障害者権利条約の国内的影響に期待をもつ人も多いかもしれませんが、「是正勧告がでても守るつもりがない」、「守らなくても国内的にはなんの影響もない」、そんな雰囲気がみえみえで、たいへんに懸念しています。成年後見については、確実に是正勧告がでるでしょう。すでにいくつかの国に対してかなり厳しい是正勧告が出ているようです(留保条項をつけた国にもだそうです:未確認)。日本は守るつもりがあるんでしょうか。世界が日本に対してなにを言おうが馬耳東風、なにをやっても政権は安泰。世界は世界、日本は日本。最初からまもるつもりがないから批准してもニュースにしないのだと懸念しています。

3)全国権利擁護支援ネットワーク(AS-J)は、昨年、参加団体が75を超えました。申し込みがどんどん増えつつあります。ありがたいことです。今年の全国フォーラムが2月14日、15日に国学院大学でありますが、そこへは、昨年8月にソウルにネットで訪問した際にお世話になった韓国成年後見学会の先生方と第一線で意思決定支援を担当している福祉スタッフの方がお見えになります。韓国の新成年後見法の最新情報が聞けると期待しています。
※ ネットのサイトはこちら。http://www.asnet-japan.net/
※ 韓国訪問の様子は、私のFBに掲載しています。見れる人は限られますが。

4)千葉県内を対象にした千葉県権利擁護支援ネットワークが昨年立ち上がりました(MCAP)。弁護士、司法書士、社会福祉士、行政マン、などなど、法的な側面で権利擁護支援にあたる専門職のネットワークです。まだまだ活動実績が少なくて、どうなることか先行き不透明ですが、参加専門職は、千葉県内の法的支援ですごい活動をされているばかりです。大いに期待がもてます。2月6日に佐原で「なんでも相談会」を実施します。
 MCAPのサイト http://chiba-mcap.info/

5)暮れに入って、千葉県立袖ケ浦福祉センターで深刻な障害者虐待が発生していることが報道されました。障害者虐待については、防止法施行の2012年10月1日のその日に館山の障害者施設で虐待があることが通報され大きく報道されたのですが(NHKが特集まで組みましたね)、今回のものはより以上の激震が走っています。虐待行為の中身も深刻ですが、そもそも通報案件ではない(施設関係者が通報義務を無視している)、隠蔽の可能性がある(やはり防止法が無視されている)、などなど報道が事実だとすれば障害者虐待防止法など存在しないかのような治外法権的な運営が県立施設で行われていたことになります。まだ発覚したばかりで事実関係の詳細などが明らかになっていないところがありますが、非常に深刻です。

6)これも暮れに入ってですが、市民後見関連の不祥事のニュースが飛んできています。こちらは象牙の塔の中の話で、われわれにはまったく詳細が不明です。2014年には、もう少し内容があきらかになるのでしょう。

7)外国の事例でおもしろいケースが紹介されました。
Jenny Hatch というバージニア州に住むダウン症の女性(29歳)が、親が子どもであるこの人のためにと見つけたGHに住みつつリサイクルショップでバイトしていたのですが、ご本人がGHの生活を拒否してショップの経営者の家に住み始めたため、両親(母と義理の父)がGHに住まわせたいとして成年後見の申立をしたところ、Jennyが自分には成年後見人はいらないと裁判所に主張して、母親の主張が退けられたケースです。下記が支援組織のサイトです。
Japan Times でも取り上げています。
日本の家裁でこんなことありえないですよねえ。権利擁護だけでなく、日本の裁判のありようを考える上でも、非常に興味ふかいケースです。

8)最後にチョー個人的なことを。
 昨年、還暦を迎えました。多くの方にお祝いをいただきました。なんだか急に老人になったような錯覚を覚えますが、まだ前期高齢者にもカウントされない年齢なんですねえ。ところが、やはり体力が落ちました。昨年の夏ぐらいからジョギングをやめています。足が痛くて走れないのです。最初は2年前の骨折の影響かと思ったのですがどうもそうではなくて、なにやら足底腱膜炎というもののようです。びっこ引いてます。
 好きな酒は好きなだけ飲んでいますから、走らなくなったら結果は歴然。ズボンがかなりきつくなってきています。さて、ことし一番、あたまが痛いのが、この老化対策ですねえ。さてどうなりますことやら。

 みなさま、今年もよろしくお付き合いのほどをお願い申し上げます。

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2013/05/11

成年後見選挙権回復訴訟の動き

 成年後見選挙権回復訴訟、東京地裁3月14日判決は商業判例雑誌類には掲載されているようですが、最高裁の裁判例サイトにはまだ掲載されていません。ずっと掲載されないのかもしれませんね。
 インターネット上では、島根県のはまだ総合法律事務所のサイトに全文が掲載されていました。
 この訴訟、いまの政治的動きからすると、東京地裁の判決が唯一の判決となる可能性がでてきました。昨日の記事です。

日経新聞
与野党10党は10日、成年後見人が付いた人は選挙権を失うとした公職選挙法の規定を削除し、被後見人に選挙権を与える同法改正案について大筋合意した。自民、公明両党が提案し、野党8党が受け入れた。与党は夏の参院選からの適用をにらみ来週中の法案提出をめざしており、今国会で法案が成立する公算が大きくなった。
 民主党や日本維新の会、みんなの党などが参加した。各党の党内手続きを経て14日に正式合意する見通し。公明党の北側一雄副代表は会合後、記者団に「特に異論もなかったので14日の段階で与野党間で合意し、来週にでも法案を提出したい。(野党と合意した上で)委員長提案でできればいい」と語った。


 現在、訴訟は、東京、埼玉、札幌、京都と4箇所で提起されていますが、判決がでたのは東京地裁だけで、こちらは国側が控訴しています。埼玉は今月の22日に裁判があり結審するかもしれませんが、それでも判決は早くて7月でしょう。

 となると、国会の改正がその前に行われる公算が大ですから、改正が成立すれば既存訴訟はどうなるか。東京訴訟は、控訴をしているものの控訴理由提出期限が5月16日のはずですので、国会の改正前に国側は現行公職選挙法が合憲であり、成年被後見人から選挙権を剥奪することに合理性があると主張してくる可能性があります(あくまで推測です)。しかしその数日前の14日には国会の与野党合意が成立し、法案が上程され、控訴審第一回予定期日の6月24日の前には成立しているでしょう。となると国のこの控訴理由の主張は、担当検事には申し訳ないけど失笑ものの主張になります。どうするんだろう。来週中には今後の動向がはっきりすると思います。

 公職選挙法の改正が成立すれば、各訴訟の目的は達成されており、東京を除く他の訴訟は国賠部分を別にして、通説的には訴えの利益を失うことになります。そのままいくと却下になりますから、少なくとも確認訴訟部分は訴えの取下げということになりましょうか。

 東京訴訟は国賠を併合していません。そこで単純に訴えの取下げという処理もありえますが、国が控訴を取下げて一審判決を確定させるという方法もあるように思います。もっとも立法の結果、国に控訴の利益がなくなるかというと、現状の民訴の世界で通用している控訴の利益の考え方からすれば、控訴の利益がなくなるわけではない、ということになるかもしれません。その場合は、控訴を維持しつつ判決までいって本体の訴え却下になることになります。しかし、ほんとに控訴の利益があるのかなあ。公職選挙法が改正されたあとも「旧」公職選挙法が合憲だと主張し続けることに、どういう手続き的利益があるのでしょう。そう考えると、国側の控訴の利益がなくなって控訴却下もありうるのかなあ、どちらにしてもこれは訴訟法的な後始末の問題であって、実質は変わりません。

 なお、本日、与党が野党に示した改正案は下記です。

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